
- 断捨離のお値段
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2年前に母が亡くなったので、実家をボツボツ片付けていたのだが、当然そんなに進まなかった。いくら隣に住んでいるとはいえ、母が60年間溜めに溜めてきたあらゆる物を簡単に片付けられるわけがない。
と、思っていたのだが… 劇団で借りている倉庫の大家さんが「ビルが古すぎるので、そろそろ建て直すから出て行ってもらえないか」という話になった。もちろん引越しや、新しい倉庫を借りるための敷金などは出してくれるという話だ。 うちの実家は元々アパートを経営していたので、部屋が6畳ごとに分かれていて、各部屋に小さな水場と押入れがある。要するに空にしてしまえば物置位にはなるわけだ。
ということで「うちの実家を劇団に貸すか~」という話になった。店子としては実に危ない奴らだ。いつ家賃を滞納するとも限らない。しかし今さらあんな古い家を誰かが借りてくれるわけないし、このまま遊ばせておくだけなので、固定資産税と火災保険代くらい浮けばいいか。という利害の一致で決まった。
とはいえ、いわゆる捨てられない症候群だった母の家を片付けるのは至難の技と言えた。一人では心が折れるので、コロナ禍でバイトが無くなったという劇団の若手を雇って、手伝ってもらった。こういう時は他人の手が入るのが一番いい。
普通ゴミに出せそうなものを「外堀」と呼び、最後の部屋を「本丸」とあだ名しながら「よし、今日は本丸の床の下の収納庫に突入や!」「はい!」 という会話の中、片付けに片付けた。そしてついに廃棄業者を2回に分けて呼び、全て空にしたのである。人生でこんなに達成感を感じたのも久しぶりだった。
ところで廃棄業者を呼ぶと幾らかかるのか? 気になるでしょうから書いていきます。(なぜかここだけ敬語)
6畳と8畳の部屋いっぱいのゴミ袋(中身は紙やら小物、衣類)タンス3本、小ぶりの食器棚3つ、カラーボックス8つ、三段収納ケース4組、食器類が段ボールに8箱、雛人形のケース、食卓用のテーブル2つ、椅子8脚、鍋やフライパンのような金属類が数箱、布団6組くらい、洗濯機、そして大物は仏壇… で一回目が2トントラックに3分の2ほどで、15万円+消費税で16万5千円。
二回目は2トントラックにパンパンの状態で20万円+消費税で22万円。合計で38万5千円だった。もちろん片付けのために雇った劇団員のバイト代は別だ。正直「ゴミって高いな」という話である。
「空っぽにしたら寂しいない?」と友達に聞かれたが、全然そんなことはない。写真や着物、小道具に使えそうなものは残してあるし、それだけで十分母を忍べる。
ところで劇団の倉庫を出て行く話には続きがある。中間業者の社長に「荷物をうちの実家に入れることにしたんですが、廃棄にお金がかかったのでちょっと出してもらえませんかねぇ?」と持ちかけ、二回目の22万円の領収書のコピーを送ってみたのだ。すると「大家さんに掛け合って、引っ越し代もかかるやろうし50万って話しときましたよ」と返事が帰って来たのだ。
私が「…全部浮いたやん」とニヤニヤしながらつぶやいたかどうかは、ご想像にお任せする。
捨てる神ありゃ、拾う神ありということか。