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大阪ん♪ラプソディー

完璧な私
私は整理整頓好きだと思われている。家中の引き出しの中がキチンと整頓されていて、めちゃくちゃ区分けが上手いからなのかもしれない。そして自分が居なくても誰かに電話でどこに何があるか説明出来るという特技も持っている。
 例えば仕事で他県に居る時に、劇団員が我が家の中にある衣装などを貸して欲しいと言って来た場合でも電話で「3階のクローゼットの小さい方のタンスのところに行ってみて」「着きました。」「そしたら、タンスの二段目の左側の引き出しし開けて。」「はい、開けました。」「そこにボタンばっかり入ってる缶があるやろ?」「はい、あります。」「その中に、学生服のボタンも入ってるはず。」「ありました!お借りしていいですか?」「ええけど、必ずそこに返してね。」という具合に遠隔操作が出来るのだ。
 そんな事が何回かあったので、みんなは私の事を整理整頓の鬼とか、記憶魔人とか呼んでいるが、実際はメチャクチャいい加減な人間なので整理整頓する癖をつけただけだ。例えば領収書を放り込む引き出しと決めたら、そこに必ず領収書を入れる。置くべきところに必ず置く、そんな当たり前のことを意思を持ってやるように心がけている。それを怠ると、ほぼ見失うという欠点があるからだ。在るべきところになかったら、もう2度と見つけられない。今までにどれほど多くの物を失くしたことか…  今年から客員教授として教えに行っている大阪芸大でも、先日やらかした。授業にはアシスタントさんが付いてくれるのだが、その一人が「これ、先生のロッカーのカギです。」と小さなカギをくれた。なんでも教授にはロッカーが割り当てられて、そこに私物を入れて置いてもいいということだった。
 「ありがとう」と気軽に預かり、私の記憶では芸大関係のファイルに挟んだ。そこまでは覚えているのだが、実際にロッカーなんか使わないだろうなという気持ちもあって、その後そのカギの事を忘れていた。そして、ある日「そう言えば、あのカギどうしたっけ?」と思って探したのだが、完全に見失って見つからなかった。「やっちまったぜ」と久しぶりの失せ物に頭を抱えたが、どこにもない。
 仕方なく「すみません、ロッカーのカギを失くしたみたいなんです」と報告すると、アシスタントさんが「え?」と固まった。「カギはひとつしかないと思うんです…」と言うではないか。「え、大学なのに?ロッカーの合鍵がないなんてことある?」と聞いてみたが、困った顔つきで「はい」と言うではないか。
 嘘やん。とは思ったが、私は「もう一回探してみるから」と言って、帰って家中を探してみたが、なん整理整頓されている我が家である。やはりどこを探しても確実になかった。結局、大学側に「すみません。私って、完璧な整理整頓好きなので、一旦無かったら二度と見つけられないと思います。」と報告した。話を聞いてくれた職員さんが「完璧な整理整頓好きなのに、カギがないんですね」と笑いながら答えた。あはは… 格好悪いぞ私!完璧なのに…。