1. ホームへ戻る
  2. 大阪ラプソディー
  3. お弁当

大阪ん♪ラプソディー

お弁当
 芝居をやっていると一日中劇場に居るので、お弁当を食べる。総合マネージメント的な役割の制作さんが注文してくれるのだが「制作の手腕は弁当で分かる」と言われるほど、毎日の弁当選びは難しい。予算や配達してもらう時間帯、中身のチョイスなどに頼む側のセンスが見え隠れするからだ。 一度5食続けてまったく同じ内容のお弁当が出た現場があった。3食目くらいで、みんな放棄して外に食べに行っていた。出してもらっているのだから文句を言う立場ではないのだが、やっぱり気持ちが上がらないというのが本音だろう。
反対に今までで一番すごいなと思った制作さんは「私、ホットミールでないと嫌なんです。食事は私のこだわりです。」とご飯やおかずをホテルの朝食のようにビュッフェ式にして、温かい状態で出していた。個人で好きなものを取る形式だ。予算もあったのだろうが、あれは現場のテンションが上がる食事だった。
 うちの劇団は団内に制作スタッフが居ないので外注している。1年位前まで、あまり食べることに興味がない人がやっていた。おまけに弁当代を1食400円以内に収めようとしていた。大阪公演の時はそれに対応してくれる弁当屋があり、そこから配達されて来ていた。毎日の事なので業者さんの方が気を遣って中身を変えてくれるのだが、それでも限りがある。
「値段が安いから我慢だね。」という気持ちはあるのだが、やっぱり飽きる。それに東京や地方の公演に行っても400円以内で収めようとするので完全に無理があった。
 「東京のお弁当の予算はもう少し上げたら?」と言うと「いや、なんとか探します。何回か牛丼でもいいですか?」と予算を守ろうとして聞いてはくれなかった。有難い反面、見るからに中身の少ないお弁当を見るとスタッフさんに申し訳なくて困った。  そうしているうちに若くて食べるのが大好きな女性に制作さんが代わった。前任者が家の都合で仕事を受けられなくなったのだ。代変わりしたのを機会に「お弁当代を600円前後にする。」と提案した。彼女は今まで400円だったことも聞いていたようで、なるべく安く、なるべくバラエティに富んだお弁当を配達してもらうように心がけてくれた。
 すると食事時間の雰囲気ががらりと変わった。前は一人ずつが適当に食べていたのだが、皆が集まって食べるようになり、会話が弾むようになったのだ。「食べるって大事やな」と改めて思った。
 毎日同じテイストの物ではなく「今日は何かなぁ」と思うと、それだけでも若い俳優たちはウキウキするようだ。それに新しい制作さんはパソコンを持ち歩き、皆に弁当屋のメニューを見せて「明日のお弁当、どれがいいと思います?」と聞いてきたりする。そうなると皆、画面に釘付けだ。食い意地が張ってるのではなく楽しいのだ。
 皆が笑顔になれる時間を作ることはとても大切だ。うちの夫が昔「独りで食べたらどんな豪華なものでも餌、誰かと食べたらインスタントラーメンでも食事」と、珍しく名言を吐いたことがあるが全くその通りだ。