
- 青天の霹靂
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去年、十数年眠らせてあった会社を起こしなおした。「合資会社 玉造小劇店」という名前だ。今までは単に「玉造小劇店」という屋号で演劇を制作してきた。売り上げは私の確定申告に合併して申告する形で十分だったからだ。申告の内容だけ見たら、私は個人としてはなかなか儲かっているけど、お金も出ていく貯蓄の下手な人。という風に思われるだろう。会社を復活させたのは文化庁や、経産省などに申告する演劇の助成金が今後は法人でないとできなくなると聞いたからだった。
そんなことはどうでもいい。ともかく今年から会社をきちんとしていくために、まずは婦人科の検診を受けることにした。以前から子宮筋腫があるので、定期的に検査はしてくださいと言われていたからだ。とはいえコロナ禍ですっかり行ってなかったので、ついでに大阪府が400円で受けさせてくれる子宮頸がんの検査もついでに受けた。
すると「ガンの疑いがあるという結果が返ってきたので、早急に大きな病院で精密検査を受けたほうがいい」と言われたのである。誰よりも体力があり、誰よりも丈夫な私にとっては青天の霹靂である。
進められるがままに大病院で精密検査を受けた。念のためMRI検査までいてもらって、結果は「上皮内がん」というガンじゃないけど今後ガンになる可能性のある状態。であるということだった。
先生が面白いほど大阪弁の人で「まぁいまはゴリゴリのガンはないっていうことやけど、1年か、5年か、10年先にガンになるかもしれんから今のうちに子宮の入り口を除去する手術はしましょ」と言う。その時に「まぁここからは本人さんの考え方やけど、中にはそれやったらついでに全部取ってくださいって言う人もおります。どないしますか?」とさらに聞かれた。
「全部取ってください!」と私は即答した。「今後、ガンになるかもしれんという不安があるんやったら、今のうちに全摘してほしいです」と。「あっそう。ほな取りましょか」と話が進み、7月の中旬に入院して手術する運びとなった。そのために尿検査、レントゲン、血液検査などをしたがいずれも問題なし。「健康やね」と言われて苦笑してしまった。
そんなことで無自覚、無症状で毎日ご機嫌に酒を飲み、元気に過ごしているのだが身体の一部では老化が始まっていたらしい。そりゃそうだ、用途の終わった臓器にそんなに栄養を回す必要もないのだから、オンボロにもなるわな。と妙に冷静に考えつつ、人生初の病で入院することになった。頭の中では使わなくなって家を解体するようなイメージだが…。
しかし「ガンかも?」と言われて検査、結果を聞いて、また検査。というひと月半の間は本当にストレスが溜まっていたようだ。最終的にガンではないと分かった日に病院の帰り道、思わずマクドナルドに寄ってハンバガーとコーラを馬鹿食いしてしまった。なんとなく邪悪な食べものをむさぼりたかったのかもしれない。
行くはずの予定じゃなかった検査に行って初期以前のガン予備軍が見つかり、手術する7月も、本来仕事が詰まっていたが先方の都合で延期になってスコーンと空いていた。「さすがに強運やなぁ」と言われている。そうかもしれない。