
- 変なサービス
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前回、7月に手術をすると書いたので、その後報告を兼ねて入院体験を書きたいと思う。予定通り子宮を全摘する手術を受けてきた。
第一月曜日に入院し、まずは採血をしたり、次の日の手術のための麻酔の説明を受けたり、看護師さんにオリーブオイルでおへそを綿棒で掃除してもらったりした。当初大部屋に入院する予定だったが、前日に友人が「痛い目にあうんだし、保険も下りるなら個室にしたほうが気楽だよ」と言うので従ってみたのだが正解だった。急遽変更したが、部屋に空きがあって良かった。
さて、バリバリの大阪弁で喋る担当のS先生が様子を見に来て「あなた、20日に講演会するでしょ?大丈夫なんかな」とやや心配顔。その時点で「ん? この先生、私がわかぎゑふだと知ったんだな」と判明。それまでは私がテレビに出てることや、演劇人だとはまったく気が付いてなかったで気楽だったのだが、バレたかと内心がっかりした。
後で「なんでバレたんですか?」と聞くと、手術の日を決める時に私が予定表を出して「入院がだいたい一週間ですよね。うーん、なんとかこじ開けます」と言ったことで「普通そんなに忙しい人っておらんやろ。同業者か?」と疑問に思い、ネゴサーチしたそうだ。研究熱心なことである。
そして私の本名を打ち込むと、アッという間に「わかぎゑふ」と初心が出てきて「おお! 僕の患者は有名人やん」と思ったそうだ。(有名じゃないですが…)それを聞いた奥さんが「あんた、この人知らんの?」と言い放ったとか。
ともかく次の日、そのS先生が主となってロボット手術というものを受けた。おへそからカメラを入れて、お腹に4ケ所の穴を開けガスを入れて膨らませてするそうだ。なんせ全身麻酔だったので見てないから分からないが、遠隔操作でするらしく最新の技術だ。
手術は予定よりも1時間も早く終わったとかで順調だったようだ。で、目が覚めて部屋に戻ると看護師さんが「携帯要ります?」とすぐに渡してくれた。24時間起き上がってはいけないのだが、携帯はええんやと思いつつ、仕事の連絡が来ていたので返信したりする。「3時間はしててください」と言われた酸素マスクが邪魔なので頭に付けていたら、うちの夫がやってきて「修験者みたいやな」と言っていた。絶対に無理だと諦めていたツールドフランスの中継も夜中にアイパッドで見ることもできたので、個室万歳な環境だった。
術後の様子を見るためにS先生も部屋に来た。「本当は4つ穴を開けるんやけど、3つにしときました。穴も普通よりも小さめにしました。ほんまは誰にでもせなあかんのですけど」と言い放った。う、うん。それって私が芸能人やと思ったから気遣ってくれたってことよね? どんなサービスやねん! と突っ込みを入れそうになった。
通常が誰よりも健康で体力があるので、術後はとんとん拍子に回復し、部屋で仕事したり、スクワットをしたりしてたら、土曜日に退院する予定が「もう宜しいですね。金曜日の朝に帰ります?」と言われて放り出されたような次第。 入院中の食事が超薄味だったのでともかく醤油が恋しくて、退院したその日に近所のスーパーに歩いていき、トロタク巻きを買ってビールで乾杯した。食事制限はありませんとのことだったので、はい。
術後2週間経ち、通院した時に以前書いた「大阪弁の掟」という文庫本をS先生に差し上げた「大阪弁極めてくださいね」ということで。ところで私が通っているのは産婦人科なのである。診察の時は下半身すっぽんぽんで大股開きになる。診察用のいすに座るとお腹の上あたりにカーテンが下りてきて、患者が恥ずかしくないようになっているものなのだが、親しくなったこともあり、S先生が平気でそのカーテンをめくって会話するようになってしまった。「どうでもええけどさぁ、散々見られてるやろし」とは思うが、困ったものだ。