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大阪ん♪ラプソディー

運命の数字
名前の画数を気にしたことがありますか? その世界では「画数」ではなく「格数」と描く。単なる字の画数ではなく、人間の格にかかわるという意味だと思う。
 私は占いには全く興味がない。例えば自分はみずがめ座なのだが「今日の運勢は…」とか言われても一瞬は気になるがすぐに忘れてしまう。その日の運が良くても悪くてもだ。
 そんな私が字の格数を気にするようになったのは夫の名前のことからだった。
 私が一人娘であるために結婚した時、夫には養子に入ってもらった。しかし彼は長男だったので「実家はそれでええの?」と何回も聞いた。そのたびに彼は「ええよ、別に継ぐような商売してる家でもないし、親もええって言うてるねんから」と返事した。そして「どうせ、俺の名前最悪の格数らしいから」と答えた。
 夫の旧姓は「三角大助」という。お義母さんは格数が悪いことを知っていて、子供の頃は「わざと太助」と書かされていたという。今でも幼馴染からくる年賀状には「太助様」と書いている人が居るので確かな話のようだ。
 彼の旧姓は「三角大助」という。数字で書くと「3737」という画で出来た名前だ。名字だけだと10画、名前だけで10画。全部足すと20画。どこを足しても10か、20になるという極めて珍しい画数だった。この20画と言う数字、というかOの付く切りのいい数字は一見揃っていて良いように思われるが「苦労が絶えずOに戻りやすい」という数字なのだそうだ。お義母さんはそれを知って 「大」に「、」を付けて「太助」と書かせて21にしていたらしい。
 とは言え、そんな格数のことなんかまったく知らないで生きていたのだが、ある時うちの劇団員が「名前の字を変えてもいいですか?」と言い出した。理由を聞くと北海道に公演に行った時に偶然知り合ったOさんというお客さんが、名前の格数を見ることを仕事にしているそうで手紙をくれたというのだ。見せてもらうと彼の名前の格数について色々書かれていた。
 ちょうどその頃に私たちが結婚したのだった。夫はうちの養子に入り「鈴木性」になってくれたのだが、演劇人だったので芸名は出来たら旧姓のままで行きたい。と言い出したのだ。しかし格数が悪いのを知っていたので、その北海道のOさんに手紙を書いて今までの経緯を説明し、字を変えて、いい格数にならないか相談してみたのである。
 するとOさんは丁寧な返事をくれた「三角大助さんというお名前の格数、私が今まで見てきた名前の字画の中でも最も酷い例のひとつです。是非改名をお勧めします。鈴木性になられて幸いです。」と、はっきり書かれた内容だった。「へぇ、そんなに酷かったんだ。」という驚きとともに、夫の新しい名前の漢字探しが始まったのである。最初は簡単に探せると思っていたが、なかなかバランスの良い字がない。ひらがなにしても、カタカナにしても上手くいかない。
 当時、メールもあったが、人の名前のことなのでいちいち手紙でやりとりをしていた。その方がやり取りに温みを感じてもいたからだ。結局半年かけたが、どんな漢字に変えても「ミスミダイスケ」という名前がしっくり収まる格数はなかった。結果として夫の芸名は「朝深大介」という字になった。
 「ミスミ」に似た音で「アサミ」というのはどうか? 朝と言う字を入れることで運を開くという意味もあるので。というOさんの申し出を夫が「それがいい!」と受けたからだった。総格数は31。堅実に努力すれば発展するという意味を持つ数字だ。
 名前というのはなんと手間のかかるものだろうと改めて思ったものだが、その手紙を交換している間に私がすっかりOさんの弟子のような格好になり、夫の名前の格数を探すのが目的だったが、いつの間にか字格を見れるようになっていたのだ。
 そんな経緯があって、時々「名前みてほしいんです。」と言われることがある。子供が生まれたからという人や、芸名を作りたいという人など、色々だが、その度に丁寧に調べて返事をするようにしている。もちろん信じるも信じないのも自分次第なので格数が絶対ではない。ただ、人には運命の数字というものがあることは確かだ。ちなみに大谷選手の背番号17は「自身をもって突き進む信念の人」という格数である。