
- 抱き合わせ
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昔、そう30年くらい前のことだったか、民芸焼肉店「はや」という焼肉屋のテレビCMがあったのを記憶してらっしゃるだろうか?よく深夜に流れていた。
笑福亭鶴瓶が割烹着を着たおばさんの扮装で店から出てきて、「どうも。え?なに?いまお肉よばれて来てん、お肉。どんだけ食べたって?もう見て頂戴(お腹を叩いて)ぱんぱん。奥さん」とシンプルなものだった。しかし、あまりのインパクトにみんな衝撃を受けたもので、友達の間でも「鶴瓶の焼肉のCM知ってる?」なんて言いながら笑いあったものだった。
しかもセットは「はや」と端っこに書かれた暖簾一枚だけ、店なんてどこにも映ってもいなかった。なんという低予算なCMだろう、その上面白いなんて…と当時20代前半だった私でさえ思ったものだ。
その謎は8年後、当時そのCMを作った人に出会って解決した。なんと抱き合わせCMというものだったらしい。「あれなぁ、何かのCMの予算のおまけで撮影したんや。ようあるねん、抱き合わせでついでに撮ると安いからなぁ」と教えてもらった。
抱き合わせ商法…Aの現場で予算が足りなくても、同じ業者に頼むからBの現場の予算で埋めるという方法である。大阪人はこれが大好きだ。
家電製品を買うとテレビとDVDとパックで買うと安くなるのが代表的だが、私は一度家賃を抱き合わせでおまけしてもらった事がある。
3LDKのマンションを借りた時に駐車場を主人の車の分と2台分頼んだら、大家さんが「2台も?そうですか、ほな家賃少し下げますわ」と言って値下げしてくれた。あの時は本当に「大阪ってええとこやなぁ」と実感したものだ。
もっとも困った例もある。この間うちの母が友人から猫をもらったのだが、「奥さん、一匹も二匹も一緒でっしゃろ」ともうちょっとで2匹になることろだった。危ない危ない。大阪人の抱き合わせ好きも強要になるとろくなことはない。
今の日本人はスーパーでおまけのない商品を買うので、抱き合わせが下手になってきたように感じる。本来は商売や外交の基本なのに、残念なことだ。