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大阪ん♪ラプソディー

景気回復?
最近とある新聞社のパーティで「ずいぶん景気がよくなってきた」と、出席していたおじ様達が話してるのを聞いて違和感を覚えた。「そうなん?演劇界全然やけど」と声を大にして言いたくなったからだ。
 関西では芝居をやっていると言うと「そんなんで食えるん?」と率直に聞かれる。どうなのだろうか?私の周辺の男子たちの近況を聞いてみた。
 うちの劇団員K(52歳)はミュージカル俳優で、東京で暮らしている。「レ・ミゼラブル」や「シャーロック」などの舞台で活躍、仕事も順調だが結婚はしてない。奥さんを養う安定した稼ぎがないからだ。ただし儲かる年は結婚したくなるとか。  N田(46歳)は沢田研二の音楽劇や、商業舞台にも声のかかる役者だが、普段はラーメン屋でバイトしている。もちろん安定してないから。彼女と同棲しているが結婚を申し出たら断られたらしい。
 U田(33歳)はわりと安定している。ギャラのない芝居にも出まくっているが、10年近くやっているバイト先ですでに店長よりも古く、融通が利くらしいのだ。彼は未だに実家暮らしで生活費も他のメンバーよりはかからないのが充実の理由だろうか。もちろん独身。
 元劇団員A(47歳)は一旦芝居を辞めて一種、二種、ついでにフォークリフトの免許までとって就職を見つけようとしたが、そこに舞台監督の仕事が入ってきて辞めきれず就職もできないままだ。今は短期のバイトを探しているが、芝居の裏方をやりながら働かせてくれるところなんてどこにもない。(どこかないですかねぇ)嫁の実家に住んでいるので家賃がかからないからまだ暢気な方だが。
 お分かりのように芝居では食えないこともないが…結婚、子供、家、車、ローンなど社会的なことを諦めたら自分ひとりはなんとか食っていけるかな?くらいが現状である。
 消費税が値上がりし、世の中の人が娯楽に遣うお金を始末して生活に回すのは目に見えている。となると芝居を観に来てくれるお客さまも減るだろう。昨今、大きな劇場でさえもひと月やっていた公演を3週間に減らし、舞台のセットを使いまわし、衣裳もなるべく着替えないようにとの指令が走っている。新しい贅沢な芝居なんて夢のまた夢だ。その分文化の質も低下するので悪循環は免れない。
 それでもみんなが芝居を辞めない理由は、とてつもなくやりがいのある仕事だからに他ならないが、景気回復の兆しなんて演劇界には1ミリも見えない。悲しい現実だ。