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大阪ん♪ラプソディー

気持ちのええ仕事
先日、大阪市内で配布されているタブロイド誌「うえまち」さんから対談依頼の電話がかかってきた。
 「もしもし、わかぎゑふさんですか?今度、大阪城の北川館長と対談していただけないかと思いまして」と言う。北川さんとは何度もご一緒させてもらっているのでもちろん快諾したのだが「それで、すんませんけど手弁当でやってますもんで、ギャラないんですよ。」と相手が切り出した。
 正直、そんなことどうでも良かったので「いいですよ」と答えた。と言うのも会社の規模に関わらず新聞社は取材にお金を払わないのを知っていたからである。いや、今回のようにギャラがないと謝られることなんてほぼないので、実に親切な対応だった。
 あまり知られていないが、一般の新聞に出ている記事の大半が、はっきり言って仕入れはタダである。よく選挙の時にコメントを下さいと電話がかかってくるが、その場合もどこでこっちの携帯電話の番号を聞いたのかなんて言われたことはない。いきなりかけてきて「すみません、○○新聞ですが、今度の選挙に対してどう思われてますか?」と切り出される。
 答えても掲載紙も送られてこないし、何をどんな風に言ったか確認することも出来ない。実に勝手で乱暴な取材方法で「コメント」なるものが掲載されているのだ。そのくせ、こっちが芝居の情報宣伝に行っても載せてくれない場合が多く一方通行な世界だ。
 そこへいくと、「うえまち」の対談は実に大阪らしいはんなりした依頼だった。当日の対談も実に楽しく過ごし、最後に大阪名物「塩昆布」とお車代のお土産まで頂いた。その上、取材班が私の近況も把握してくれていて、「次のお芝居の宣伝も微力ながら載せさせてもらいますんで」と言うではないか!
 「これこれ、こういうこと。お金出されへんかったら、せめて気持ち出すのが仕事ってもんやん」と私は何度も心の中で拍手した。
 大阪人は値段交渉をしたりするのでケチだと思われているが、そうではない。「お金使えへんかったら気ぃ使え」という言葉が残っているくらいで、親切はお金に匹敵する行為だと思われている。
 だから未だに道で迷ってる人を見たら、周りで教えたくてウズウズしている、おっちゃんやおばちゃんが多いのかもしれない。「そこまで一緒に行ってあげるわ」とか「近所やから送ってあげる」と車に乗せてくれる人も居るくらいだ。ある意味お金をばら撒いているようなものである。
 そう考えると大阪人は実に気前がいいということになる。これからはそっちを前面に押して言おうと思う。