1. ホームへ戻る
  2. 大阪ラプソディー
  3. 本当の教育

大阪ん♪ラプソディー

本当の教育
 先日、大阪から東京まで向かう新幹線に乗っていた。私の席はE席。新幹線の普通車両はA〜C席の3席が並び、廊下を挟んでD、E席の2席があり、都合横に5席ある。
 つまり私は一番端の窓側の席に座っていたわけだ。そして横の席は空いていた。ふと見ると反対の窓側のA席に若いお母さんと、小さな男の子が座っていた。
 子供は3歳くらいだったろうか、母親がしっかりと膝に座らせていた。よく見る光景なので、最初は気にならなかった。新幹線の配券は指定しない限り、E席とA席から売られる。窓際で風景を見ながら快適にお過ごし下さいということだろう。次に埋まるのが通路側のC席とD席だ。
 3席の真ん中のB席はあまり人気がない。知り合いと乗る場合は別だが、一人ずつだと混んでない限りわざわざ他人と他人の間に座りたがる人は居ないからだ。だからB席はよく空いている。
 子連れの人がそれを期待してA席に座るというのも見慣れた光景だ。名古屋で誰も乗ってこない場合、新横浜までの1時間以上はその空席が確保できる。つまりB席が空いたままになると子供を座らせるわけである。空いてる席に荷物をちょっと置いたり、子供を座らせても車掌も特に注意などしない。
 現に私もその日は横の席が空いたままだったので荷物を置いていた。ところが、例のA席の母親は名古屋を過ぎても子供を空席に座らせようとしなかった。横のB席も、通路側のC席も空いたままだったのに、彼女は子供を足元に座らせたり、抱いたりしながら最後まで空席には見向きもしなかった。
 子供も眠いのか時々むずかるが、横の席に座ったり、大きな声を出したりもしない、実に大人しかった。
 実に日本人的な美しさだな。と私は感心して見とれた。お金を払って権利を得ているのはA席の分だけなのだから、ズルはいけない。と実体験で子供に教えているようにも見えた。
 こういう親の行動が本当の教育なのだろうなと、妄想を膨らませてみたりもした。そして自分が楽なばかりに横の空席に荷物を置いてあったのを見て、慌てて足元に戻した。
 最近の若いお母さんはなってない。などと言う人も多いが、中にはこんなにしっかりした人も居るのだ。日本人の未来は決して暗くないぞ!と嬉しくなった。
 そして、心の中で親子に拍手し、一足先に新横浜で下車したのだった。