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大阪ん♪ラプソディー

稽古場
 うちの劇団の本公演があり、稽古をしていた時のことだった。警察官が「何かありましたか?」と入ってきた。
 みんなキョトンとしていたが、初夏だったので窓を開けてやっていたせいで、喧嘩するシーンを見た近所の人が通報したらしい。
 警察官は「芝居ですか。はぁ…」と拍子抜けしていたが「近所に分かるようにして下さい」と注意されたので、それ以後は窓のところに「芝居の稽古中」という札を出すことになった。
 私たちが今稽古している場所は私の友人宅である。去年の夏、長年使っていた稽古場が無くなり、うちの劇団はいま稽古場を放浪中なのだ。しかし大阪にはレンタルの稽古場があまりない。最低でも20畳くらいの場所が居るので探すのも難しいのが現状だ。
 東京には稽古場として貸している場所が沢山あるし、最近は子供が減っているので、閉鎖した学校などもレンタルの稽古場として運営されている。実に羨ましい限りだ。
 去年、急に稽古場が無くなった時に私は幼馴染の家を思い出した。そこは天理教の教会で、家とは別棟に2階建ての離れがある。お祖父さんの代に相撲の谷町を始めたとかで、大阪場所の間だけ相撲取りがやってきて一階の食堂で食事し、2階で寝泊りできるように作られた建物だ。
 我が家から歩いて5分のところなので、お相撲さんたちが近所の公園でぶつかり稽古してるのを見に行ったり、ちゃんこパーティに招かれたりしたこともあるので、よく知っていた。要するに大阪場所の時だけホームステイに来るような感じだった。
 ところが、数年前のやらせ事件でその部屋が吸収されてしまい、今は近所の寄り合いなどで使われているだけになっていた。今の当主M氏は幼稚園から小学校6年間一緒だった友達なので「あそこ何かに使われへんかなぁ」と相談されていた。落語会を開催していというので噺家を紹介したこともある。
 そこで「あそこやったら稽古できる!」と思い立ち、去年から稽古場として借りているのだ。が、基本は民家である。そりゃ窓を開けて喧嘩のシーンをやっていたら近所の人はびっくりするだろう。今度から気をつけねばと反省中だ。
 ちなみに女の子が襲われて叫ぶシーンもあったのだが、その稽古の時は若手の劇団員が念のために外で「芝居の稽古中です」という看板を持って立っていた。ご近所の皆様本当にお騒がせしてすみません。