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大阪ん♪ラプソディー

勝負
 今放送中の大河ドラマ「真田丸」にも武将の勝負をかける瞬間がいかに人生を左右するかというシーンが多くある。
 「今を置いて他にない」とか「今ではない」とか、どっちやねん?いつやねん?とツッコミながら見ている私はいいお客さんなんだろうなぁと思う。
 ところで、リオオリンピック閉会式に人生を賭けた勝負服を着ていた人が居たのにお気づきだっただろうか?誰あろう新しい東京都知事、小池百合子氏だ。
 彼女は次のオリンピックの開催地、東京の顔として登場した。着ていたのは一見シックな色の着物であった。帯こそ金色で、金メダルに引っ掛けたのかと新聞などでは書かれていたが、男目線の記事だなと私は冷ややかに読んでしまった。
 というのも、小池氏が着ていたのは訪問着という柄が一枚の絵になっている、着物の中では一番高い格のものだったからである。絵の上からは刺繍もほどこされていた。「こ、これは…勝負かけて来たね」と日本人のおばちゃんなら目を光らせるポイントであった。数百万円はかかる代物だからだ。
 もちろん訪問着なんて公費では賄えない、自前だ。そしてこの間都知事になったばかりの彼女がいくら大急ぎで注文しても間に合わないはずである。ということは前から持っていたいざという時の一枚に違いない。金糸の帯の方はリオに合わせて買ったのだろう。おそらくあれも百万単位のお値段かと…
 しかも!なんとあの閉会式は雨が降っていた。絹の着物は雨に濡れたらシミになる。洗い張りといって、一旦着物をほどいて洗い直し、縫い替えないと着れなくなってしまうのだ。だが、場所はリオである。着物屋にすぐ持ち込むというわけにはいかない。つまり二度と再生しないリスクが非常に高かったというわけだ。
 小池氏ほどになると、当然洋服も予備に持って行っていただろう。いや、洋服だったらいくら忙しくてもリオで買えるはずだ。それでも雨の中で着物を着る決断をしたわけである。つまり、彼女は数百万のお召し物をドブに捨てる覚悟であそこに立ったということである。
 まさしく日本女性の「今を置いて他にない」という覚悟の表れ。民族衣装を身に付けて五輪旗を振る姿からは「やったるで」という文字が見えるようだった。着るものは時には人の勝負を表す鎧なのだなと久しぶりに思った。
 マリオの格好している阿部首相がご愛敬にしか見えなかったのは決して値段のことばかりではないのだろう。