
- 言葉、言葉、言葉
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ネット上で若者が「OK」を「おけ」と略して使うのは流行っていると、ニュースで取り上げていた。ご丁寧に専門家まで出てきて「スマホで返信をすぐしたいという思いが、英語変換するよりも『おけ』の方が早いから流行したのでしょう」と答えていた。
「そんなこと解説せんでも分かるわい!」とツッコミそうになったが、こういう現象も理由なしではニュースに出来ないのだろう。
私たち演劇人の中で話題になるのは「ら」抜き言葉をどこまで許せるか?だろうか。「食べれない」「着れない」など本来は「食べられない」「着られない」という言葉から「ら」が抜け落ちる現象は何十年もかけて地位を得てしまい、今では一般表記にも登場するようになった。芸能人や政治家だって使っている。
だから使ってもいいとは思う。市民権を得た言葉なのだから、とも思うが、ひと昔前の人は言わなかったので、それが癖になってしまうと、時代劇などに出ていてついアドリブで台詞を言う時に出てしまうことがある。
「拙者は納豆が食べられないのじゃ」というところを「拙者は納豆が食べれないのじゃ」と言ってしまうと、それだけで現代人とバレて芝居自体が面白くなくなってしまうわけだ。なので我々は「ら」抜き言葉を言うまい! と飲み屋でお互いに確認し合うことがある。
もちろん昔の人だって流行語を使っていた。今はもう使わないが「面白い」の反対語として「面黒い」と言っていた時代だってあるらしい。
ちなみにうちの親父の形見の本の中に昭和6年の「モダン語辞典」というものがある。第二次大戦前のまだまだ日本人にも余裕があったころの洒落本だ。その中には…
【おけら】馬鹿、間抜、阿保などの意。土方職人の間に使われる。
又博打に敗けたことを「おけら」といふ。
【おさへ】泥棒仲間の隠語で、強盗のこと。
なんて、さらりと書かれている。「隠語って、載せたら隠語ちゃうやん!」というお言葉は置いておくとして、ともかくれっきとした辞典にそう載っているのだ。
【鉄管ビール】水道の水のこと。平民階級の人間がやせ我慢に洒落て言ったものである。
これなんか「差別やん!」と叫びたくなるが、こういう場合に便利な言葉を使うなら「時代」なんだろう。時と共に使う言葉も変化していくのは世の習い。これからもどんな言葉が日本語に成って行くのか楽しみではある。