
- うーやん
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俳優の弟分にろくでもない男がいる。どのへんがろくでもないかというと、まず金にだらしない。貰ったギャラはすぐに使う。自分に使うだけじゃない、一緒に居る後輩なんかに「今日は金あるねん、飲んでええぞ」などとおごってしまうのだ。
そして次の日にはオケラになって「姉ちゃん。金貸して」と言い出す。何十年この調子なんだかと思うが、たぶん一生治らないだろう。この間も臨時収入があったのを知っていたので「たまには返しや」と言うと、なんと「今までに借りた18万は必ず返します」とメールしてきた。
「は? 18万ってなに? あんたに貸したお金、そんなもんちゃうで。10万単位で何回貸したか分かれへんし。大体数えてないわ!」と返信すると「すみませんでした。」と神妙になる。どこから18万と言う数字が出て来たのか説明もないが、それ以上返すという話にもならない。
せめて、そのギャラで若い奴におごってやれと言うと、後輩にわざわざ「焼肉会するぞ!」と連絡したらしいが、この半年実施されてはいない。
女に対してもとても親切なのだが、いい加減極まりない。約束、記念日は軒並み忘れる。それを責めると突然ものすごく高い花なんか買ってきて送ったりする。
歴代の彼女が「ええ人やけどアホすぎる」という理由で去って行った。本人はそれが勲章だと思っているらしく反省もしない。
部屋の中は男所帯そのもので、いつ掃除したのか聞くのも嫌になるくらい片付いていない。なぜ斜めに物を置いて、その上にまた荷物を斜めに置くのか説明を求めるが、笑って答えたことがない。
そんな奴だが見た目が色白で、はんなりした色男なのだ。おまけにちょっと料理が上手い。点で付き合うと実に「ええ男」という部類に入るらしい。
人の魅力とは見た目なのか? イメージなのか? 実態なのか? いや、そのギャップの度合いなのかもしれない。私は最近彼を「うなぎ」と呼んでいる。掴みどころがないくせに旨いからだ。あだ名は「うーやん」である。
昔から大阪弁には優男に関する適切な言葉があまりないので、この際「うーやん=見た目は優男だがろくでもない男」として広げて行こうと思う。