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大阪ん♪ラプソディー

気持ち
 関西では「気持ち」というと、お金のことを指す。居酒屋などで先輩が「これ気持ちだけ」と言ってお金を出せば「お釣りは取っておいて」という事である。
 他にもちょっとしたお土産のことを気持ちと呼ぶ事もあるし、誕生日のようなイベント事がない時に渡すプレゼントのことを指す場合もある。
 要するに、相手を思っているという印のことを気持ちと呼び、本来は「お金や品物でごめんね。ほんまは何か役に立ちたいねんけど」という意味合いだ。

 今年は日本で初めて、ラグビーのワールドカップが行われた。試合開始の前に両国の国歌が歌われるのだが、その時「マスコットキッズ」という子供たちが各主将と手をつないで出てくるのが慣例だ。今回の大会で、日本の子供達のほとんどがその国の国歌を一緒になって歌った事に気がつかれただろうか?

 最初に注目されたのは、ウルグアイ代表のマスコットキッズを務めた青木創太君(8つ)だった。彼はウルグアイ代表を担当することが決まると「一緒に歌えば、自分の国で試合している気持ちになってくれるかも」と考え、国歌を紹介するインターネット動画を見て練習を繰り返したという。

 当日、歌い終わると、ウルグアイのガミナラ主将は創太君の頭をなで、試合後にサインをもらいに来た際には「オー、アミーゴ(友達)」と声を掛けたそうだ。

 埼玉・熊谷ラグビー場では、招待された中学生約四千人が対戦するロシアとサモアの国歌を斉唱。音楽の授業や給食時間に練習し、掲げる国旗のプラカードは夏休みの宿題として制作した。
 カナダ対イタリアがあったレベルファイブスタジアム。福岡県春日市の天神山小学校の児童が双方の国歌を歌った。試合後、カナダの選手たちはゴール裏に陣取った児童に駆け寄り、感謝の気持ちを伝えたそうだ。

 日本が初めてベストに残り、対戦した南アフリカ戦でさえ、相手側のマスコットキッズが堂々とアフリカの歌を歌っていた。国中の人が日本を応援する中でも、彼は自分のエスコートしたチームに敬意を持って歌い切ったのだ。

 残念な事に中継の始まった中盤くらいまではテレビ局側も気がついてなかったようで歌っている子供たちが映ってない場合が多かった。もちろん彼らはテレビに映りたくて歌っていたのではないが、そんなところに気持ちを配って中継してあげて欲しかった。

 何かしたい気持ち。人を思いやる気持ち。小さな子供たちにさえできることを私たちは忘れていなかっただろうか? と今回のワールドカップを見ながら感じた。さすがは敵味方を称え合うノーサイドの文化に基づいたラグビー界である。
 来年のオリンピック、パラリンピック大会に向けて、今こそお金に変えられない気持ち。本当の「おもてなし」を考える時なのだろうと思う。