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大阪ん♪ラプソディー

正真正銘
先日、京都に泊まった時のことだ。夕方入った飲食店でフィギアスケートの中継をやっていた。高橋大輔選手が引退する前に全日本の大会に出たあれである。
 エースの羽生選手と、宇野選手の一騎打ちも見ごたえがあったが、高橋選手の最後の挑戦はスポーツファンとしては実に感動的だった。「もはや点数は関係ない、高橋大輔のスケートそのものが人を引き付ける魅力なのだ」と、協議か芸術か?その狭間に立たされがちなフィギアというスポーツだからこそ面白く見られる瞬間でもあった。
 それを見ていたオバちゃんたちは「いやぁ、高橋大輔もうあかんのに、またやってるん?」と言い放った。
 「こ、この人ら何様や?」と思いつつ、彼女たちの会話を聞いてると…
 「高橋って幾つなん? もう歳やろう? 若いのんの中にオッサン一人かいな」
 「4回転飛ばれへんから、一回引退しやったのに、またやってるの? 諦められへんねんなぁ」
 「フィギアって、18歳くらいで名前売れてへんかったら、もうアカンな」
 「衣裳がちゃうやん、売れてる子はキラキラしてるもん」
 「高橋も肩に羽付いてるで」
 「そら有名やもん。」
 2人はその後もロシアのザギトワ選手が7cm背が伸びたからダメになったとか、プルシェンコ選手がアナ雪の王子様に似てるとか、昔の器械体操の選手の話を名前を間違いまくりながら「クルクル回ったり飛んだりするもんは若かくて体重が軽いうちでないとあかんねんて」と大きな声で喋りまくり、最後に「そう思うたらキムヨナは頑張ったなぁ」「あれは意地、意地」と締めくくった。
 その間に羽生の演技が終ったが、なんと肝心の高橋選手の演技は見ずに帰って行ったのである。
「嘘やろ? ここまで話題にしてんからせめて見てあげーや」と心の中でツッコミまくったが、知らない人たちなので知らん顔して、その会話をメモパットに覚え書きし、こうやってエッセイのネタにさせてもらっている。  いやぁ、久しぶりに無責任で言いたい放題、根拠なし、悪気なしのオバちゃんトークを聞かせてもらった。
 あの人たちは本物だ「本物のオバちゃん」だった。