
- 今どきの若い奴は…
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いま、2つの大学で教えている。二校とも芸術系の学校で、ひとつは演劇の学科のあるクラスの一年を通した演出。もうひとつはラジオドラマの脚本と演出、そして声の演技指導である。いずれも芝居をやって来た事で頂いている仕事だし、今の20歳くらいの子たちに触れるいい機会でもある。
今どきの若い奴は…と最初に言ったのはアリストテレスだったとか聞いたことがあるが、人類の永遠のテーマに違いないのだろう。人は年々経験と知識が増えていくのだから、若者が頼りなく見えるのは仕方のないことだ。
と、理屈では分かっている。十二分に理解しているのだが、それでも若者の浅はかさを見ているとめまいを覚えることもある。「いやいや、それはアカンやろう!」と心の底からツッコミを入れたいことが次から次へと起きる。
先日も、芝居の稽古中に台詞を喋っている生徒の後ろで、出番がないから踊りだした生徒がいた。彼女が踊りだすと他の子も次々と踊りだし、おいおい、ここはクラブか?と思う状況だった。
しかし、最初から怒っても仕方ない。まずは理由を聞いてみた「なんで踊っているの?」と。すると「勝手に体が動いちゃったんで。見てるだけだと暇なんで」と答えた。そうか、何も考えてなかったんだなと納得しつつ「人が台詞の稽古をしている時に踊るのは、邪魔だと思わないのか?」と問うと「邪魔だと思います」「じゃ、今度から止めような」「はい」という会話でやっと理解してくれた。
小中学生並みだな…と内心思ったが、彼女一人がそういうわけではない。全員がそんな感じなのだ。そこで人類の系譜として「今どきの若い奴は…」と思うわけである。昔はよかった、なんて思わないが…人の芝居を観るのは実にいい勉強になるので見ないと損だと思っていた私からは想像もできない自由さである。
そして去年、一番驚いたのは出席を取っていたら返事のない生徒が居たので「休みか…体調悪いのかな。誰か理由知ってる?」と聞くと「あ、誕生日です」と他の生徒が当たり前に言ったことだった。「誕生日…だから?」「誕生日なんで出かけてるんじゃないですかねぇ」と言うではないか。
誕生日だから授業とはいえ、芝居の稽古を休んで好きなことをしているということか?買い物に行ったり、家族と食事をしたり、恋人と過ごしたりという…なんじゃそらぁぁぁ?と私の心は激しく動揺した。
そんな個人的なことで芝居の稽古を休んでいいのか?まてよ、大谷翔平だって子供が生まれるから休みを取ったではないか、あれと一緒か?いや違う!子供が生まれるという人生で1日しかない機会と普通の誕生日が一緒であってたまるか!などと勝手に葛藤したのだが…その後も出席を取ってると「彼は今日、バースディホリデーです」とあっさり言われてチーンとなったのだった。普通なのだ。今の学生たちにとって自分の誕生日を1日中自分のために使うというのは…
結局去年一年で3回同じことがあり、すっかりバースディホリデーという言葉にも慣れてしまった。彼らは社会に出ても有休をとってやるに違いない。すると何十年か経てば慣例になるのだろうか。い、今どきの若い奴は…では済まないかもしれない。