
- 手紙
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私は東京の小さなタレント事務所に所属している。と言っても劇作家、演出家として所属している形で、しかも10年も居るが仕事を貰ったのは2回だけ。というのも元々「仕事は要りません。東京の窓口になってほしいだけです」と言って入ったので2回でも十分だ。
「窓口」というのは、私に連絡をしたい人がネットなどでエゴサーチをすると、所属事務所が出てくる場合がある。その場合に対応してくれる場所ということである。過去に1度「わかぎゑふさんの所属なさっている事務所でしょうか?」という手紙を貰った。なんとそれは母が所有していた兵庫県の土地の近所に実家のある男性で「あなたの所有なさっている家の塀が壊れかけていて、実家の両親が通る道なので、修理をしていただけないでしょうか?」という内容だった。
母が亡くなってから数年、いや彼女が加齢のために放ったらかしていたから都合十数年、その土地には誰も行ってない状態だった。私も兵庫県に住んでいる従兄が時折覗いてくれていると聞いていたので安心仕切っていたのだが、その手紙が届いたので知り合いの大工さんに見に行ってもらってビックリした。
「塀は大したことないけど、庭がジャングルみたいになってて、多分スズメバチが巣を作ってるみたいやね」と言うではないか!大急ぎでスズメバチの駆除と庭の木の伐採、そして塀の修理をしてもらった。
その後、「親の残した土地を相続したばかりに」というタイトルで小説の一本も書けそうなくらい紆余曲折あったが何とか土地を売却し、今に至る。それもこれも1本の手紙が届いたからこそだった。これがメールとかだったら見落としていたかもしれないなと改めてアナログの貴重さを噛みしめた。
そして今月、所属10年にして2本目の手紙を受け取った。「なんだろう、また何かややこしいことが始まるのか?」と恐る恐る開いてみると、なんとそれは小学生とおぼしき子供からだった。
「わかぎゑふさんへ こんにちは ぼくはリトルチャロが大好きです」と始まる手紙には私がNHKの英語の番組で原作を書いた「リトルチャロの冒険」というニューヨークで飼い主とはぐれて一匹で苦労しながら、いろんな縁が繋がってとうとう日本に戻って来るという物語なのだが、それが大好きな男の子からの熱烈なファンレターだったのだ。
書いたのはもう十数年前で、今教えに行っている大学の生徒が「小学生の時見てました。あれ書いた人ですか?すごい」なんて言われるから、この手紙の男の子が生まれるはるか前に違いない。
確かに今でも再放送しているので見られはするが、今更ながらにハマってくれたようでシリーズのすべてのDVDを持っていて、なんとサイトで調べたぬいぐるみの作り方を見て自ら製作したという。それを博物館などに行く時に持って行くというのだ。完全にチャロマニアだ。有名キャラってすごいなと改めて感心した。手紙の二枚目にはチャロの絵も添えられていた。
そんなことで、私はその彼に当時のストーリーブックと非売品のクリアファイルを送ろうと思っている。孫のような歳の男の子から貰った嬉しすぎる手紙は住所を見ると九州から東京の所属事務所に送られて来たようで、それが大阪の私の家に転送されて届いたようだ。しばらく仕事部屋に飾っておこうと思う。