特別インタビュー vol.03
JSAFナショナルチーム 安田 真之助 氏
3月29日、競技活動を終えた安田真之助選手が私たちの会社まで足を運んでくれました。
これまでの安田選手の活動や、長いヨット人生について、溢れる思いを語って頂きました。
~ヨットとの出会い~小学3年生の頃に父親の影響でヨットを始めた安田選手。
初めてヨットに乗った時の記憶について、「楽しかった訳ではなく、苦痛だった。」と語ります。
それでもヨットを続けようと思ったのは、彼のまわりで器用に操船する小学生達を見たことで、“悔しい”と感じたから・・・、その一瞬の感情が、長いヨット人生の始まりだったそうです。
オリンピックを目指したのは高校生の頃、当時のセーリング日本代表選手の活動に影響を受けたのが最初のきっかけ。
その後、大学生の頃に全日本選手権で優勝したのをきっかけに、本格的に「世界に行きたい」「世界で勝ちたい」という気持ちが強くなったと言います。

~オリンピックを目指して~
大学卒業後、安田選手はヨットの練習をしながら指導者として就職もしましたが、オリンピックの夢を諦めることができませんでした。
そこで職場の理解を得て休職し、約一年半の間は活動に専念することにしました。
海外遠征が多かったこの期間について、「外国人コーチと日本人コーチの指導方法の違いが印象に残っている。」と振り返ります。
「同じことを言っていても、日本人にはない表現方法で指導される」。
エッセイの1回目に綴られていたように、技術指導がコーチの役割だと認識されている日本との考え方の違いを感じ取ったようです。
言葉の壁についても、辞書を持ち歩き、話せないなりにもコミュニケーションを図ろうとしたり、ルームシェアを通して食事を一緒にしたりと、競技以外の生活面でも努力していたそうです。

~メンタル維持~
いつも海へ出る前には、毎回ウォームアップとして体操を欠かさずにするようにしていたという安田選手。
ラグビーの五郎丸歩選手や、野球の前田健太選手による“マエケン体操”からの影響が大きかったようで、これを行うことによりレースに対する不安な気持ちがとれ、集中して挑むことができたそうです。
それでも自身の性格について、「メンタルは弱い」「いつもスタートで引っ込み思案になってしまう」と言います。
海外のコーチからも指摘を受けていたようで、最後の予選の日もスタートから積極的に攻めようという思いでいっぱいだった・・・。
その“攻め”の姿勢が、「リコール(フライング)」という結果を招いてしまったのです。

~不安の中でも進み続け・・・~
スタート直後、リコールの合図はありますが、どの艇が失格となったのかはフィニッシュまで分かりません。
スタート直後の2秒間ほどは自分のことかと疑ったそうです。
一度スタート地点に戻ってからやり直すこともできますが、それではもう勝てない事は分かっていたので、そのまま最後まで進み続けました。
「自分が失格になったかもしれない・・・」と感じているなかで、その思いを断ち切り、レースに集中し続けたのです。
約20分間のレースのなかで、一番後悔したこと・・・、それは、「近くにいる艇を意識してしまったこと」。
セーリングで一番大切なことは、「風の状況を見て進んでいくこと」。
「過去のレースでも、結果の良くなかった時はライバルの艇を気にしながら進んでいたことが多かった。逆に良かった時は、自分と向かってくる風のことだけを考えて進むことができていた。」と、悔しそうな表情で振り返ります。
そう、野球やサッカーなど、多くのスポーツはチームプレーが大切ですが、セーリングは常に“自分との戦い”です。

~活動を終えて~
2016年・リオデジャネイロ・オリンピックへの切符にあと少しのところで手が届かなかった安田選手。
今後はどうするのかを聞いてみると、「ヨットを通じて生徒を教育する指導者を続けていきたい。スポーツは技術面や健康面だけでなく、精神的にも強くなれるから。」と、誇らしげな表情で答えてくれました。
最後に、今後オリンピックを目指す人達へアドバイス・メッセージをもらいました。
「自分は最後のオリンピックに出ることは出来なくなってしまったんですけど・・・、自分は活動のために休職し、いろんな人の協力があったから最後まで活動することができた。長く活動していると、まわりから心配の声などを聞くこともあるが、自分がしたいことは自分で決めるべき!まわりの声は気にせず、やりたいことに専念してください」。

~編集部からのメッセージ~
勝負の世界、勝つか負けるかも大切ですが、それだけではありません。
「いろんなことを経験して、最後は人生で勝つ」。
そんなことの大切さを、安田選手を応援させて頂くなかで学ばせてもらいました。
21年間のヨット人生でさまざまな経験をされ、悔しさも喜びも味わってきた彼であれば、きっとヨットを通じて生徒を育てる指導者としても活躍されることでしょう。
そんな安田選手を、三協精器工業株式会社はこれからも応援させて頂きます!
感動をありがとうございました!!

夜は大阪市内にある洋食屋さんで食事会をしました!
