大阪ん♪ラプソディー【第9回】

大阪ん♪ラプソディー

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「言葉の威力」


 先日、東京に居て最寄の駅まで歩いていたら、小学生が2人口ゲンカをしていた。少し背の大きい方の子は顔立ちもイケメンで、もう一人はやや小太り気味のオッサン顔の男の子だった。
 2人はサッカーボールを取り合いながら帰宅していたのだが、小太り少年の方が上手かった。これにイケメン君が怒って「なんだよ、なんで今ボール取れちゃうんだよ!短足のデブが!」と言い放った。
 私は大爆笑してしまった。完全に逆ギレである。格好いい男の子なのに、サッカーが下手なことでプライドが傷ついたようだ。
しかし東京弁って…と「短足のデブ」という表現に2重に笑うことになった。
 そしてしみじみと「ああ、東京の子は子供の頃から東京弁なんやなぁ」と改めて思った。当たり前のことだが、大阪人の私には新鮮である。
 そういえば去年アメリカに行った時、帰りの飛行機の中に、向こうで育ったという4歳の日本人の女の子が乗っていて、下に広がる日本の街を見ながら「ダディ ディス イズ ジャパン?オールモウスト?」と英語で父に聞いていた。お父さんがそうだよと答えると、彼女は「ワーオ!」と驚いていた。
 日本で育ったら絶対に「ワオ!」とは口にしないだろうが、彼女にとっては当たり前のことだったのだろう。
 育った土地の言葉は人間の性格形成に大いに影響する。ちなみに大阪の小学生は「短足」とか「デブ」なんて言わない。「なんやねん!ぶっ細工なくせに!」と言うだろう。いやもっと言うなら二枚目の男の子が小太り君より容姿が優れているという感覚自体が東京より希薄だ。
 大阪での男性の評価は、(1)面白い (2)甲斐性がある (3)二枚目。…くらいの順番なので、格好よくてもサッカーが下手なら逆キレする権利はない。もしそんなことしたら小太り君に「何キレてるねん?悔しかったらサッカー上手なれや。」と言い返されることになる。顔では評価されない。
 大阪の子供が驚いた時にとっさに言う言葉は「嘘やん?」がポピュラーだろうか。対して東京の子供は「本当?」と聞くように思う。まず疑うことから入るのも大阪流だ。どちらにしてもワオ!とは言わないが。

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