大阪ん♪ラプソディー【第106回】

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「古い奴だとお思いでしょうが」


 先日、北欧の電子マネーの状況を取材した番組を見て驚いた。スウェーデンやフィンランドでは老若男女ほとんどの人がスマホ決済で支払いをするらしい。
 「現金を使ったのはいつですか?」という質問に主婦が「さぁ、お金なんて2年くらい見たことないわ」と答えていた。ほんまかいな? と思ったが、街中のあらゆるところでピッピッと電子音が聞こえている。中にはどう見ても80代だろうと思われるお婆ちゃんなんかも映っていた。
 「へぇ~うちの旦那なんかDカード持たせて2年、一回も使ってないままやけどなぁ」と感心した。
 とはいえ、私たちもアマゾンや楽天でネットショッピングすることが増えた。ペイペイなんてものも安心のために携帯に入れている。日本もこのまま現金を持たない生活に移行していくのだろうか。
 もちろん、私だって便利なものは使っている。メルカリ、という中古品をネット販売しているサイトをご存じだろうか? 主婦が着なくなった服や、使わない食器なんかを売っているのだが、これが芝居の衣裳や小道具を探すのに丁度いいのだ。
 今まで買ったものというと、古い電気スタンド、昔のコーラの瓶、壁掛け電話、スマホの見本、丹後ちりめんの反物などを購入した。
 先日も古い徳利が欲しくて探していたのだが、メルカリで検索するとメチャクチャ沢山出て来た。出品者のコメントが「お祖母ちゃんが亡くなって、押し入れから出てきたものです。」とか「母がしまい込んでいた物なので、綺麗ではありません」なんて書いてある。
要するにB級品ですが、いかがですか? ということだ。正々堂々と安物を売るという度胸の良さと、ヤフーオークションのように値段を競って、時間を使うことがないので便利だ。一昔前ならゴミだったものが、必要としている人のところに売られて行くのも悪くない。
しかし、知り合いの女の子が「お母さんの昔のブランド品を勝手にメルカリで売って、月に20万になった」とか、ある食事会で知り合った男の子に「仕事は何してるの?」と聞くと「あ、メルカリです」と答えたのには驚いた。
何でも彼はメルカリで服を出品して、注文が来たら中国に発注しているのだそうだ。「在庫抱えなくて済むんで。でも時々メチャクチャ届くのが遅いんで困るんですけどね。」と飄々として言い放った。
「若者よ、もっと実直に働けよ」とオバサンは思ってしまうわけだが、彼らにとっては割のいい商売であり、それなりに実直なのだろう。大した知り合いでもない私が説教することではないのだろう。(したくてたまらないが)
昔、矢沢永吉の「成りあがり」という自伝を読んだが、その中にバイトの給料を貰ったら全部千円札に替えて数を増やし、それを机に並べて「俺、金持ち」といい気分に浸るという一文があった。「なるほどなぁ」と感動して、よく真似をしたものである。
   どんなに電子マネーやネットショッピングの世界に移行して行っても、やっぱり現金(ここは【げんなま】と読んで下さい)の迫力には敵わない。と思う私は昭和34年生まれ。どこから見ても古い人間なのだろう。  

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