大阪ん♪ラプソディー【第123回】

大阪ん♪ラプソディー

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「リサイクル」


 NHKで定期的にやっている「ソーイングビー」という番組をご存知だろうか? イギリスのBBC放送の制作なのだが、国中からオーディションで選ばれた10人ほどの男女が与えられた課題をクリアしながら服を縫う腕を競うという内容だ。
 そう! ただ服を縫うだけである。しかし集まった人たちを見るとイギリス社会の多様性がうかがえる。
 妻や娘の服を縫い始めたらソーイングが趣味になったという50代の現役警察官。アフリカにルーツを持つ移民の黒人女性。いつも母親の服を縫っているというゲイの数学教師。孫の服を縫うのが生きがいの主婦などなど、誰も彼もが素人なのだが物語がある。
 そしてイギリス人の中にこれほど裁縫をする人が居るということにも驚かされる。男性が多いことも、仕事に対する観念に男女差がない証だろうか。
 番組は、そんなメンバーが時間内に課題どおりに縫うというシンプルな作りだ。制限時間が来ると縫っている途中でも提出しなくてはならない。そして審査員の目に晒され、毎回1人ずつが落第して行くのだ。最後は2人が残り、決勝戦が行われるという構図である。
 審査員は有名なデザイナーが務めるのだが、縫い上がった服を見て率直に意見を言いつつ、賞賛したり、ダメなものはどこがダメか指摘して行く。
 たかが裁縫、されど裁縫。参加者の意地や成長、友情や事情、洋服への思いが交錯し毎シーズン台本なきドラマが見事に出来上がって行く。
 この番組で知ったのだが、産業廃棄物の中で上位を占めているのが「洋服」なのだそうだ。審査員が「洋服は今の段階で6世代後の分まで賄える量がすでにある」と言っていた。そのためか番組内の課題も3回に1回はリメイクだ。古いテーブルクロスで子供服を作ったり、ジーパン3本で自由に創らせたりする。
 おお! これぞSDGsってやつやん! と大いに感心した。確かに昔と違って洋服は大事に着る時代から、買い替えて捨てる時代になって久しい。そんなつもりがなくても、いつの間にか自分が自然に対して加害者になっている場合は多い。
お洒落を楽しんでいる間に、どこかに皺寄せが来ていたのだと思うと心苦しい限りだ。そんなことで最近は古着を買うように心がけている。  

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