ホームへ戻る > エッセイ&コラム > 大阪ん♪ラプソディー > 大阪ん♪ラプソディー【第124回】
よく時代劇で「無礼者め!」という台詞がある。耳慣れている気もするが、世の中にそんなに無礼者っているのだろか?無礼、辞書で引くと「無礼な行為をする人、礼儀を欠く人」とある。無礼な行為ってなんだ?無作法ってことか?
列に並ばず、乗り物に乗ったりする、大きな声で喋る、人を指差して笑う、結構無礼な感じだが、知り合いの大阪のおっちゃんとか、おばちゃんはみんな無礼者やん! という気がしてきた。あかんやん、大阪人。
東京の人はどうだろう? 乗り物には確実に並ぶ、少なくとも大阪人より寡黙ではある。
人を指差して笑ったりはしない。そんな人見たことがない。おお! 無礼者は居ないじゃないか。ちなみに無礼の反対は慇懃(いんぎん)らしい。人に接する態度が丁寧で礼儀正しい事出そうだ。
しかし世の中には「慇懃無礼」という言葉がある。一見礼儀正しいが、内実は尊大であるという意味だ。要するに「まぁ、素敵ねぇ」なんて口で言っておいて、ちっともそう思ってない人の事などを言う。関係ないがうちの京都の叔母がそんな感じである。人の悪口は言わないが、褒めながら貶すみたいなところがあり、子供の頃から「この人、性格悪いな」と密かに思っていた。私は彼女にいつも「いつも元気で活発やなぁ」といわれていた。「女の子なのに男みたいにバタバタ走り回って、落ち着きのない子」と言いたかったようだ。京都人は怖い。
なぜ今回、無礼者の話を書いているかというとテレビで「吉田類の酒場放浪記」という番組を見たからだった。もう20年以上やっているので、ご存じの方も多いだろうが、吉田類というライターで、イラストも描く、飲兵衛のオッサンがひたすら飲み屋に行く番組である。
その吉田類が行く店で、よくご常連さんから「これ食べてください」と酒の肴を貰うのだ。
有名なテレビ番組だし、お客さんにとっても嬉しいのだろう。それはそれで人のふれ合いだからいいのだが、その時、吉田類は必ず一番いいところを取るのである。特にトンカツを勧められるとど真ん中を平気でとる。それを見ていて「この人、無礼やなぁ。いつもど真ん中取るねん」と、うちの旦那が言い放ったのだ。「そうなん? 番組やからちゃうの?」と答えたが、何回見ていると確かに真ん中から取る。刺身も、カキフライも、何もかも。
そこで私は数人の友達に「5切れから6切れくらいのトンカツを、一切れどうぞって勧められたら、何切め食べる?」と聞いてみた。端っこを取ると勧めてくれた相手の顔を潰すようで悪いし、かといって真ん中取ると品がない。という人が大半であった。ということで「端から二番目」が圧倒的に多かった。
そうだよね? 大人ならそうするよね! 私は実に安心できる結果を得て満足したわけだが。
「じゃあ吉田類はなんなんや?」という話に戻り、現状我が家では「無礼者」と呼ぶようになった。だから最近、無礼者という言葉がめちゃくちゃ気になるのである。あなたの周りの無礼者はどんな人ですか?