大阪ん♪ラプソディー【第157回】

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「暑さ対策」


 2年前の夏に20歳になるタロウという猫が死ぬ前に、彼が住み着いていたリビングのエアコンを28度に設定して入れっぱなしにしていた。年老いた猫に酷暑は辛かろうと思って、せめて最後のひと時は爽やかな気温の中で過ごしてほしいと思ったからだ。
 それが死ぬ日の夜だけはなぜか真夏にもかかわらず風が気持ちよくて、窓辺で寝ていたタロウに自然の風を感じてほしくて窓を開けておいた。そこから満月に少し欠けた月が見え(本人はもう目が見えなかったのだろうが)風に吹かれ、月に愛でられて逝ったのだった。
 その時私は「ああ、人間にはこんな自然に看取られ、優雅に死ぬことはできないなぁ」とつくづく思った。私たちはきっと色んな管に繋がれ死んでいくのだろうなと。息を引き取ったばかりのタロウを抱きながら私は猫から生き様を教わったように思う。死ぬまで愛され、命を生き切ること、かく在りたいものだとつくづく思った。
 しかしまぁ毎年のこの猛暑、今年はついに北海道も40度を記録するような日があり、その日の沖縄が29度で、どないなっとるねん地球? と叫びたいくらいだった。先週、北海道から友人が遊びに来たのだが「いやぁ、北海道も暑いです。と言っても一瞬だったので我慢できましたが… 大阪はこれが毎日なんですね。よくみんな外に出ていけますね」と言っていた。まだ別の日にやってきた沖縄の親子連れが「本州の地熱っていうの? この照り返しの蒸し暑さ、死ぬ~沖縄は夕方からは風が吹くから暑くても自然なのよ」とのこと。彼らにとっては都会の人工的に増幅する厚さは格別らしい。
 我が家は土地が狭いので細長い4階建ての家のなのだが、東と南に向いていて、おまけに天窓がある。夏は一番上の4階が毎日40度近くまで気温が上がる。1階から上がって行くとどんどん気温が上がって行くのが体験できるので、もし体感したい人がいたらどうぞお越しくださいと招待したいくらいだ。その4階のベランダで洗濯物を干すのだが、干している10分足らずの間に恐ろしいほど汗をかく。「サウナ要らんよねぇ、うちの家」と毎日つぶやきつつ、ひと汗かいてからシャワーを浴びるのが日課だ。
 そのシャワーだが、うちは夏は水シャワーを浴びている。というのも水を出しても、この暑さでお湯のような水しか出てこないので、それで済んでしまうのだ。経済的と言うか、地中に埋まってるはずの水道管なのにえらいことになってるなぁと実感している。
 エアコン生活ばかりしてては身体に悪いと思いつつ、切る勇気がないので、せめて内臓には優しくしようとエアコンの中で湯豆腐とか、煮魚を食べているが、果たしてそんなことで暑気払いになるのかどうかは分からない。冷たいビールと鍋というメニューも頻繁だが、何やっていることやら。
 この地球温暖化の問題はどこまで私たちの生活に響いてくるのだろうか。今年からEUでは衣料廃棄による環境負担の軽減を目指して売れ残った衣料品、靴の廃棄を禁止する「エコデザイン規制」が段階的に始まった。現在たった1枚の服を作らなくても人類は6世代後まで着る物が足りている計算だそうだ。どの家のクローゼットも着なくなった服でいっぱいなんだから、そりゃそうだろうとは思うが、なんとも複雑な気分なので、それをテーマにした芝居を書くつもりだ。
 自然と向き合い、その中で暮らし死んでいくということがここまで難しくなった現代で私たちはライフスタイルを根本から見直さないといけない日が来るのだろう。しっかり向き合わねば。  

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