ホームへ戻る > エッセイ&コラム > 大阪ん♪ラプソディー > 大阪ん♪ラプソディー【第160回】
私は普段、石鹸で顔も身体も洗っている。子供の時はそのまま頭も洗っていた。剣道と水泳を習ってベリィショートで刈りあがっていたので、ほぼ男の子みたいなものだったから石鹸で十分だった。
一時、化粧品に凝りだしたときもメイクが楽しいだけでスキンケアには全く興味がなかった。芝居を始めて赤貧生活をしていた20代はなおさらだ。それもこれもお肌が丈夫なおかげである。60代になった今もそれは変わらず、ノートラブルなので本当に親に感謝している。
1年ほど前のことだった。バスルームの石鹸が無くなっていたのだが、うっかりしてて買い置きもなかった。しかしふと見ると私が使っている石鹸のケースの横に水色の石鹸が置いてあった。夫が使っているものだろうと思い「ラッキー」とそれを泡立てて身体と顔を洗った。その後2,3日仕事が忙しくて石鹸を買いに行く暇がなかったので「まぁ「いいか、これ使わしてもらおう」とその水色の石鹸を使っていた。ちなみに私は化粧水や乳液というたぐいのものを使う習慣はほぼない。冬に少し美容液をつける程度だが、肌が突っ張ることがないのでたいてい忘れて生きてきた。
で、その水色の石鹸を使って3日ほど経ったある日、夕食の時に夫が「あのさぁ、お風呂に水色の石鹸置いてあるやろ」と言い出した。私は「あ、石鹸切らしてて、使わせてもらってるで」と答えた。すると夫がきょとんとした顔つきで「え?」と言ったまま私の顔を覗き込んだ。
「…あれで顔洗ってんの?」とちょっと怒ったような顔つきだった。あれ?高い石鹸なのかな、使っちゃいけなかったのかしら?と思って「ごめん、明日買い物に行けるから自分の買ってくる」と謝ったが、彼は次の瞬間苦笑いして「あれ、ウタマロ石鹸やで。俺の水虫洗う用に置いてあるねん」と言い放った。
「ウタマロ石鹸?」私は頭の中でそう繰り返した。ああ、なんかものすごく洗浄力の強いあれか、と思ったが、特にそれ以上の驚きはなかった。しかし夫は「さすがにあれで顔はやめとき」と笑った。しかし何のトラブルもなかったので、面白いからSNSに書いたのである。
するとあっちこっちから「なんやて!それはアカン!」というメールや書き込みがあって、まるで私が何か悪いことをしたような感じで説教してくる人も現れた。長年一緒に仕事をしている芝居のスタッフが「お姉ちゃん、あれはうちの息子の野球のユニフォームとか洗ってる洗剤だよ。普通の石鹸じゃないからね」とわざわざ言ってきたくらいだ。
「面の皮が分厚いのもいい加減にしろ」と親友がちょっと怒ってメールしてきて、私が「大丈夫、今日石鹸買ってくるから」と返信したら、次の日に化粧品を送りつけてきた。「ともかくこれを使いなさい。歳を考えてお肌は大事にね」というメッセージが付いていた。
そんなわけで、さすがの私も反省して顔を洗ったら彼女が送ってきた化粧水などをつけるようにし始めた。それがそろそろ無くなるなぁ…と思っていたら、なんと三協精器さんが化粧品を出したと「SOYUL」というスキンケアクリームを送って来てくれたのだ。「おおお、またもやラッキー」と使わさせてもらっている。そしてこのクリーム、いくら鈍感な私でも違いが分かるぞ!というほど肌がしっとりする。「化粧品も大事なもんやなぁ」と60代半ばにして感心する毎日である。幾つになっても発見することがあるものだ。そんなわけで、最近スキンケアに凝っている。遅いですかねぇ…