大阪ん♪ラプソディー【第18回】

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「おせちもいいけど…」


 昔々、もう30年くらい前のことだろうか?カレーのCMに「おせちもいいけどカレーもね」というキャッチフレーズがあった。お正月のおせち料理に飽きたらカレーなんていかがです?という控えめだがインパクトのあるCMだった。というのも昔はお正月にカレーを食べるなんて思いもよらない事だったからだ。
 お正月といえば、やっぱりお雑煮におせち。それに鍋料理と家族で「和をつつく」イメージだったんである。さすがにどんな家でもスパゲッティーも、ハンバーグもない、ましてカレーなんて絶対ないという固定観念があった。しかし皆な心の底では「ありだなカレー」とビビーンと来た。なんとなくお正月に洋風のものを食べるという行為が、ちょい悪な気分をくすぐって「やってみたい」と思わせた。
 少なくとも世間ではそうだった…というのも、うちの家ではおせちもお雑煮も、ましてお鍋なんて夢のまた夢だったからだ。小学校の時は親戚が一緒に住んでいたので何となく叔母の作ったおせちがあったのだが、中学に入って母だけになるとお正月はすごいことになった。なんせ業務用の10斤くらいある長—い食パンを2本くらい買って来るのである。それにでっかいハムを一本。さすがにそれには少々お金をかけていたように思うが…ともかくそれをドンと置いて「さ、うちのおせちやで。何ぼでも好きなだけ食べ」と言い放つのが恒例になっていたからだ。
 だからカレーのCMを見た時は衝撃的だった。「何?おせちに飽きる人が居るのですと?まだ食ったこともない人間がここにいるのに?」という気持ちになった。
 カレーってなんだ?うちのオカンの作るカレーってシャバシャバで薄味で玉ねぎしか入ってないけど、おせちより美味いんか?と頭の中でダンスを踊りそうな勢いだった。
 そんなわけで、私は人生の早い段階から料理好きになり、おせちの季節にはお煮しめを炊き、黒豆を煮込み、紅白なますを仕込み、伊達巻を焼く、立派な(?)お正月正統派に育ったのである。だから未だにお正月にカレーを食べたことが無い。
 2014年のお正月のメニューを考えていてふと思い出した懐かしいCMだが、そう考えると世間より30年遅れているとも言える。
うーん…なんか悔しいので、今年は密かにカレーも仕込んでみようかと思案中だ。
 皆様はどんな新年ですか?

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