ホームへ戻る > エッセイ&コラム > 大阪ん♪ラプソディー > 大阪ん♪ラプソディー【第22回】
うちは実家の90度横に建っている。双方の2階のベランダで繋がっていて上から見るとL字方になている感じだろうか。
実家の母は92歳と高齢だが元気なもので、無類の猫好きだ。家の飼い猫は2匹だが、通い猫の出入りは頻繁である。去年くらいから若いメス猫が居るなぁと思っていたら、案の定妊娠した。そしてこの春、ベランダで4匹の子猫を出産してしまったのである。
「いやぁ可愛い。あんた、どうするの?」母がその時言い放った。「おいおい、あんたが餌付けしたんやろうがいっ。なんで私がどうするか聞かれてるの?」とツッコミを入れたが、母のずるい癖で都合の悪い時はニコニコ笑ってるだけ。飼い猫が居るし、面倒見切れないという顔つきだった。
かくして私は生まれて初めて、自宅で猫を飼うという経験に恵まれた(?)母猫と4匹の子猫…最初は台所の隅に居たが、人間が触るので取られると思ったのか、途中でクローゼットに立てこもったり、知らない間に洋服が子猫の巣に運ばれていたり、夜中に鰹節の粉が食いちぎられていたりと、色々事件はあったが一番心配だったのは家のどこかに糞をしないかということだった。
しかし母の友人のおばちゃんが「大丈夫や。子猫の排泄は全部親が舐めるから」と教えてくれた。匂いが残ると敵に見つかるという本能らしい。
そうして母猫は、自分の母乳ではまかないきれないようになった5週間目に子猫たちをクローゼットから加えて下ろしてきたのだった。子猫たちはその日から親と同じ餌を食べ、すぐにトイレも覚えた。実に見事な子育てだ。
4匹の子猫のうち2匹はすぐに知り合いが貰ってくれた。あと2匹をどうしたものかと思っていたら、なんとツイッターで知り合った猫のボランティア団体の人から「ネコジルシ」というサイトがあるから里親を募集してみたらどうかと言われ、さっそく登録した。
すると1日で8件もの問い合わせがあり次々と里親が決まったのだ。
最初は多少抵抗はあったが、猫好きの里親たちの熱心さは半端ないもので、ネットで知り合う人たちも結局は情で繋がっていくのだなと思うと納得がいくようになった。
人生にはいろんなハプニングがあるが、今回は本当に多くの見知らぬ人に助けてもらった。助けにならなかったのは母だけだ。しばらく通い猫の餌付けは禁止しようと思う。