ホームへ戻る > エッセイ&コラム > 大阪ん♪ラプソディー > 大阪ん♪ラプソディー【第34回】
今年は変則的に京都の大学で演劇を教えている。しかし、例えば音楽のように、まず譜面を読むことが出来るようになり。とか、スポーツのように競うというわけにはいかないので、実にあやふやな学問と言われている。確かにそうだ。
教える側がそう思ってるくらいだから、生徒はもっとあやふやだ。先週も俳優の身体の作り方について教えた。
「人間は誰もが自分の前に用事があるために、長年前に曲がっていく。腕の位置や姿勢などが段々湾曲していくもの。それをまっすぐな位置に直していくことが俳優の身体作りの第一歩です。」と説いた。
姿勢が悪い役者などいない。なぜなら気になるからだ。悪いとしたらそれは故意的に背中を曲げたり、足を引きずっている役を演じている時である。
そのため学生たちの適当に猫背になったり、内股になったりしているクセのついた体をまっすぐにしていかねば成らない。人間盆栽を育てるような作業である。
で、私の授業は必ず、次の時間に先週の話を要約して言えるようにさせている。理論は自分の頭で理解し、まとめられるところまで行かないと身にはつかないからだ。
「先週、身体をどうしろって言ったっけ?」
と聞くと、「身体を…シャンとする…」と誰かが弱弱しく答えた。次に「バーっとなってる身体をピーンとさせる」と言う。そういう答えが出てくると「違うよ、きちんとするんや」などという子も居る。いずれにしても筆記試験があったら全員落第だ。
中には「こんな風にするためですよね?」と姿勢を正して見せてくれた男子もいた。うん、あんたも筆記試験には向いてないね。という感じである。
次に演劇界の歴史も教えたので聞いてみた。「演劇の始まりはなんやったっけ?」答えは神事、つまり神様に感謝して歌い踊ったのが始まりなのだが…「歌舞伎!」と叫ぶ者もいれば「盆踊り」と言う者もあった。聞いてへんかったんか?とツッコミを入れそうになっていたら、ひとりが「分かった。河原乞食?」と言い放った。…うん、聞いてなかったね人の話。ということで、また一から教え直した。
彼らを一人前の演劇人にするには、先は長いようだ。まぁ私は来年も教えに行くとは限らないので責任持ちかねるけど、頑張ってほしいなぁ。