大阪ん♪ラプソディー【第37回】

大阪ん♪ラプソディー

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「楽しい番組」


 時々、関西の民放ラジオ局の番組を審査するという仕事が回ってくる。私の担当はいつもエンターテイメント部門である。
 各局の一押し番組の録音があらかじめ送られてきて聞き、審査表をつけておくのだが、最終的には三人の審査員が合議の上で最優秀を決めることになっている。
 今年は戦後70年の節目ということで手塚治虫原作のドラマがあるかと思うと、日常的な音楽番組もあり、選ぶ基準に苦労した。私がイチオシだったのは、昭和のコマーシャルソングを一手に作った三木鶏郎という作曲家を紹介した番組だった。
 「♪明るいナショナル♪みんなのナショナル♪」「輪、輪、輪♪輪が三つ♪三輪、三輪、三輪石鹸」「キリン♪レモン、キリンレモン♪」「♪くしゃみ三回、ルル三錠」などなど誰もが知っているコマーシャルソングを作りまくった昭和の怪人である。
 日本版ディズニー映画の初の音楽監督でもあったとか、ラジオ番組「冗談音楽」の構成作家であり、主演であり、音楽も全部作っていたとか。もう逸話は尽きない。その上、かかる音楽が知ってるCMソングばかりなので面白過ぎる展開だった。
 おまけに案内役でもあった、作曲家のキダタロー氏と作詞家の伊藤アキラ氏がなんと最後に「三木鶏郎ソング」を作ってしまうという付録付きの60分。これぞエンタメ!という番組で久しぶりにラジオっていいなぁと思った次第である。
 実は去年もこの審査員の仕事をしたのだが、その時はキダ先生とご一緒だった。私は内心「わ、キダタローやん」とミーハー心を揺らしていたのだが…いざ審査に入った時に先生が「あれ、この番組…僕聞いてないわ」と言い放ったのだ。
 「え?審査員やのに聞いてない番組があるってどういうことですか?」と誰か言うべきだったのだろうが、私ももう一人の審査員も、もちろん担当の局の面々も「あ…」と言ったまま黙ってしまった。
 すると、さすがにまずいなと思われたのか「そやから君ら2人で審査しといて」と言いだしたのだ。「ん?この番組だけ2人でやるのか?ええええ?」と思ったが、にっこり笑って「はい!」と答えてしまった。なにわのモーツァルトに言われたら逆らえないし。と言う雰囲気であった。
 そんな事件があったので今年、キダ先生が審査員に入っていないことに少しドキドキしていたのだ。「外されちゃったのかしら」と思ってもいた。
 しかし、送られてきた番組を聞いていたら一番オモロイやつにメインで出てるやん!という復活をされていたので、ビックリするやら、安心するやらだったのだ。
 ラジオって人がいないのに人が見えてくる不思議な魅力がありますねぇ。

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