ホームへ戻る > エッセイ&コラム > 大阪ん♪ラプソディー > 大阪ん♪ラプソディー【第38回】
先日、電車に乗っていた時のことだ。土曜の昼だったのでわりと込んでいる状態だった。そこに小さな子供が2人乗ってきた。お兄ちゃんは3歳くらいで絵本を持っていて、妹は2歳くらいだったろうか。席がどこも空いてないのを見ると、2人は閉まっているドアを背に、いきなり私の足元にペチャっと座り込んだ。足を前に投げ出し、リラックスしているではないか。
「ん?」私の心の声である。「いやいや、あかんで! 込んでるし、ちょっと電車揺れたら足踏まれるで。」と続けて私は心の中でツッコミを入れまくった。
しかし、兄妹は悪びれることなく絵本を読み始めている。周囲の大人もみんな怪訝な様子で見ていた。私は母親らしき人を探してみた。居た、すぐ傍のつり革に掴まって立っている。どうやら彼女らしい。上品そうな顔立ちに小ぎれいな格好をしている。特に柄が悪そうな感じはまったくない。
その時、妹の方が「ママ、見て」と絵本の絵を指差した。すると母親はにっこり笑って「良かったねぇ」と応えているではないか。
普通なのだ。この人は椅子席が空いてなかったら、子供を地べたに座らせて、絵本を読ませることが悪いことでも何でもないのだ。と納得せざるを得なかった。
と、その時横の男性が覗き込んで笑った。なんと父親も居るではないか!「両親公認か…」私は絶望的な思いで2人を見つめた。
気分が悪いとか、歩き疲れたと言う子供を足元になるべく邪魔にならないように座らせる。というのなら分かるが、両足を前に投げ出してドアに持たれた状態の子ども達を見ながら、ニコニコ笑っていられる親というのは、いったいどんな育ち方をしたら出来上がるのだろうか?
「ああ、アカン。こいつらに説教したい!」と大阪のおばちゃん全開な気分になったが、唐突過ぎるのでそのまま次の駅で降りた。
以前、新幹線の中で新大阪から東京まで、隣の席が空いているのに、ずっと子供を抱えて座っていた若いお母さんを見たことがある。
一人分の座席代しか払っていないのだから当然のことなのだが、実に慎ましやかな美しい行為だった。「今の若い母親も捨てたもんやないなぁ」と関心も得心もしたが…
若いお母さんも色々だ。彼女らの子ども達が大きくなってどんな日本を作っていくのだろうかと思うと、期待と不安が入り混じってドキドキハラハラするが、どうもワクワクしないのは困ったものだ。