ホームへ戻る > エッセイ&コラム > 大阪ん♪ラプソディー > 大阪ん♪ラプソディー【第45回】
先日、大阪の松竹座という劇場に歌舞伎を観に行った。「ワンピース」という超人気マンガを舞台化、しかも歌舞伎でやるというのでチケットは完売で大人気だった。
私は前売りを買いそびれたので、劇場側にコネを使ってキャンセル待ちをお願いしてみたら、なんと前から6番目というS席が取れてしまった。正直、知り合いも出てるのでもっと後ろの席の方がいいのだが、無理やり取ってもらったチケットに文句は言えない。
いち歌舞伎ファンとして楽しむことにして、幕間にお弁当食べたり、夜だったのでロビーでビール飲んだりして、大いにリラックスして楽しんだ。
しかし、そんな良い席だったのに、横の2席がずっと空いていた。ここもキャンセルになった席で埋まらなかったのかな?と思っていたら、かなり終盤になってお客が入ってきた。お化粧ばっちりの美人と、トレーナー姿のお兄さんである。
およそ歌舞伎ファンでもアニメファンでもなさそうで、携帯を鳴らしたり、キョロキョロしてりして、実に行儀が悪かった。しかも携帯を鳴らしたのは都合2回である。今度やったら注意しようと思っていたが、舞台が大立ち回りのシーンに入りメチャクチャ盛り上がったので、すっかりそれも忘れていた。
そしてその幕が終わり休憩時間になった時だった。私の真横に座ったトレーナー姿のお兄さんの方がいきなり「あの、僕ボクシングの井岡と申します。」と言い放ったのだ。あいさつ代わりに千社札(名前の書いてあるシールです)を差し出してる。私と、反対側の横に座っていたおばさんの2人にくれようとしているようだ。ってことは私のことをとくに知ってるわけではないようだった。
こちらは2秒ほど「井岡って…井岡?あの世界チャンプの?ああああ、ほんまや、井岡やん!」と、頭の中でグルグル言葉が回転し、
「わぁ、ありがとうございます」と受け取って握手なんかしてもらったが…よーく考えると実に変なシチュエーションだった。結局私は携帯のことを注意したわけではない。舌打ちしたり、睨んだりしたわけでもないのだ。なのに、何の関係もない私に、自ら井岡ですと名乗る必要があったのだろうか?
例えば「すみません、遅れて入って来て」とか「さっき彼女が携帯鳴らしてごめんなさい」という言葉が付いているのなら分かる。しかし単に「ボクシングの井岡です。」と切り出し、そのままニコニコしているっていうのはどういうことだったのだろう。
劇場で横に座った人が一般人に「私、ラグビーの五郎丸です」とか「サッカーの本田です」といきなり言うだろうか。何だったのだろう…井岡さんは大阪人特有の目立ちたがりなのか?
観劇の感激とは別に、今もそのことを考え中である。みなさんどう思います?