大阪ん♪ラプソディー【第56回】

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「本当の目標」


 私はあまり見ないが駅伝という日本特有のスポーツがある。その中でも人気があるのは箱根駅伝だ。今年は青山学院大学が3連覇を果たし、大学の在る渋谷でも大々的なパレードが行われた。
 彼らを率いて偉業を成し遂げたのが原晋監督である。この人の作戦が実に現実的だ。数年前に監督に就任した時に、生徒たちに「6年後には優勝する」と言い放ち、そのためにする目の前のトレーニングを逐一書いて貼り出したというのだ。「目先の目標をコツコツこなすと、勝手に大きな目標に近づいてると教えただけ」と原監督はシラっと言うのだが、これがなかなかうまくいかない。
 「優勝する」という目標は誰でも簡単に描けるが、そのためのステップの組み方、それに応えられる選手の有無や、突発性のトラブルだって想定しなくてはならない。
 だが、青学の生徒たちはそれをやり遂げたわけである。何故か? キーワードは「6年後」にあるように思う。生徒たちが「俺たちが在学中に優勝することはないのか」と思うか「6年後に優勝するために、まずは俺たちが基盤を作って行かないと」と思うかが大きな鍵だったのではないだろうか。当然、青学は後者の心理が後輩に後輩にタスキを繋ぎ、ついには優勝したのだろうが、実に上手い底上げの仕方だと感心した。
 なにより、大学は4年制であることを知ってて時限装置を6年に設定したところが憎い! 憎すぎる。つまり最初に聞いた生徒たちはどんなに頑張っても優勝は出来ないと言われたのもおなじなのだ。しかし、そこを未来の後輩のために走るという美意識にすり替え、見事にレベルアップに繋げたわけである。
 うーん。演出する時に「6年後に満席になるように目の前の目標をこなせ」とか言っててみたい。無理か…そんな気の長いこと言ってたら制作さんに大目玉くらうだろうし、まず仕事無くなるよなぁ…
 しかし、本来はそうあるべきなのだ。大局を見据えて目標をたてる。そのために今は捨て石になろうとも努力を惜しまない。そうすれば自然とチームのレベルが上がり、次に入って来る後輩もそれに付いていかないといけなくなるのだから、当然強くなる。
 スポーツチームの監督に学ぶことは本当に多い。  

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