大阪ん♪ラプソディー【第57回】

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「母がまだぁ〜♪」


 母がこの春95歳になった。そして「要介護1」に認定された。
 彼女はまだ自分で歩けるし、お風呂にも一人で入る、洗濯も出来るので、老いたとはいうものの元気なものである。60代から始めた居合抜きの稽古にもまだ行っている。
 そんな母だが耳がかなり遠いのと、さすがに膝が駄目になってきている。2年位前からはお金の観念が甘くなってきていて「歳とったなぁ」と感じつつ、私が管理するようになった。
 近所のデイケアの方から電話を貰ったのは去年の暮れのことだ。なんでも友達について突然行ったらしい。しかし、去年の時点で母は介護の認定を持っていなかった。向こうのスタッフは、一応「お試し」ということで受け入れてくれたらしい。
   当の母はちゃっかり貰ったお弁当を食べて、お風呂にも入って来たと言うではないか。「いやいや、行楽やないねんから!」と、さっそく母に注意し、介護認定の調査員という人に来ていただくことになった。
 実は2年ほど前にも来てくれたことがあるのだが、その時は調査員の方が自分を子ども扱いすると思ってムカついたらしく「この人、私のこと年寄やと思ってない?」と怒った。けっきょく結果は「お元気なんで」ということで要介護には認定されなかった。その時点で93歳。立派な年寄だったのだが、しっかりしてたようだ。ということもあったので、今度はどうなんやろ? と思っていたのだが…
 なんと、調査に来た女性の前で居合抜きの稽古に持って行ってる刀を持ってきて「私は上半身、丈夫なんよ。これ抜いて稽古してるから」と言い放ったのである。当然だが生まれて初めて真剣を見た調査員のおばさんは「きゃあああ!」と叫んだ。
 私は慌てて刀を取り上げて「いやぁ、あの毎週稽古に行ってるので、扱いなれてまして。あはは」と刀を鞘に納めたが、向こうは完全にビビっていた。
 「また認定は無理か…」と思ったが、時間の観念が希薄になってることや、記憶力の低下などが認められて要介護1に認定してもらった。やれやれ、ちょっとは年寄らしくしてくれるかな? と思いつつ最初のデイケアに向かう日に送り出そうと思ったら、今から食事とお風呂のサービスを受けに行くのに、朝風呂に入っているではないか。
 「お母ちゃん、何してるの? 今からお風呂入りにいくねんで」と言うと「だって、初めてのとことに行くねんから綺麗にしていかんと失礼やないの」と言い放った。
 緩やかに老人化しているが、まだまだ…まだまだのようだ。若い頃は身体の弱かった人だが、人生は分からないものである。  

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