ホームへ戻る > エッセイ&コラム > 大阪ん♪ラプソディー > 大阪ん♪ラプソディー【第59回】
先月、同級生が亡くなった。58歳、会社を早期退職して自分で商売を始めたばかりだった。「今までは家族や会社の為に働いて来たけど、これからは自分の楽しみの為に働く」と笑っていた。退職金で株なんぞ買い、残りの人生を楽しもうとしていた矢先だった。
知らせを聞いたのはなんと同級生のグループラインに奥さんからの書き込みがあったからだ。「今朝、Eが亡くなりました。入院してから2週間あっという間でした」という書き込みに何人かのメンバーが「質の悪い冗談か?」と思ったという。私が一番早く反応したひとりで、すぐに彼以外のグループラインを作って、情報を交換するようにしたのだが…今どきはラインで訃報を知るのだなと、なんとなく味気ない思いがした。
それでも奥さんが連絡して来てくれたことによって、亡くなった日の夜に近所の同級生と彼の顔を見に行くことが出来たし、お通夜、お葬式にも多くのメンバーが駆けつけることが出来た。文明の利器よありがとう!と心から言いたい。
が…物書きの性なのか私は「奥さんはどうやって携帯の、しかもグループラインに書き込めたのだろうか?」という疑問が頭から消えなかった。
お通夜の後で、Eのよく行っていた店に行った時に、まさしく私と同じ疑問を持っていたSが「しかし、奥さんはどうやって携帯のロックを解除したんかな?」と言い出した。
それを皮切りに携帯電話にロックをかけているかどうかという話になった。ある者は「嫁はんに見られたら死んでも死に切られへんわ」と何もかもにロックをかけていると言い、ある者は「それなに?」と聞く。中年の集団らしい話で盛り上がったのだが、女友達の多くは入院中に奥さんに教えたか、ロックを解除していたのだろうと平和的な意見を尊重した。
しかし、私ともう一人の同級生Mは指紋認識でロックしている…もしもEがそうだったら…私たちは死んだばかりのEの指を携帯に当てて、ロック解除をしている奥さんの姿を想像してしまったのだった。「あかん、あかん。考えんとこ」とすぐに止めたが…個人情報というものをどう捉えるか、あれからずっと考えている。
ちなみに我が家は新婚当時、お互いの携帯電話を勝手に見たら離婚という掟があった。ま、そんなもの見なくても別れたが、個人情報はどこまで守るべきなのか? 悩ましいところだ。