大阪ん♪ラプソディー【第76回】

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「ええんちゃう」


 先日、フェイスブックを見ていたら「大阪弁ってすごいな」という記事を揚げている人がいた。写真付きだった。
 なにかと思ったら大阪弁の「ええ」という言葉のバリエーションを英訳したものが写っていた。

「ええねん!」は「It's good」または「It's OK」「ええやん」は「It's nice」とある。
 ふむふむ、これは大阪人にも面白そうな翻訳だなと以下続きを読む。
「ええの? → Are you sure?」
「ええで、ええよ → Sure」
「ええなぁ → I'm jealous」
「ええわ → No thank you 」
「ええから → That's OK」
「ええって → I'm really fine」
「ええやろ? → It's nice,don't you think?」
「ええやろ! → Who cares?」
という展開で「大阪弁ってすごいな」になったらしい。「大阪弁でほとんどのコミュニケーション取れちゃうじゃん」みたいに思われたのだろう。まぁ多少無理はあるが、確かに間違ってはいない。付け加えるなら「ええんちゃうん → Good」「ええがな → Very good」ということろだろうか。
 これに「あかん」と「あほ」のバリエーションを加えたら、生活に使う簡単なコミュニケーションはほぼ取れるといっても過言ではないかもしれない。大阪弁とは実に便利な言葉である。
 これを標準語の「いい」に置き換えたら、言えないことはないが、やはり実用率から考えると大阪弁の「ええ」は圧倒的に日常用語と言えるだろう。
 今後は是非、来日するインバウンドの方々に覚えていただき、大いに使ってもらいたいものだ。イントネーションにはうるさい大阪人だが、外国人にはめっぽう親切なので、100歩でも200歩でも簡単に譲ってしまうはずである。
 ただし、大阪に住み慣れた我々は「ええ」をこんなには使い分けないということを書いておきたい。私たちは大体のことが「ええんちゃう」で終わってしまうからだ。
 これは英訳に出てこなかったが、大阪人が一番良く使う「ええ」のバリエーションだ。「良いか悪いか聞かれたら、「あんまり良くはないけど仕方がない」という、限りなく否定に近い感情から、絶対的肯定まで使える便利な言葉である。

 「な、パクチー入りカレーあるけど食べる?」などとと聞かれたら、あんまり好きでなくても「うーん。ええんちゃう」と、とりあえず答えたり、付き合ってる相手に「結婚しょーか?」と申し込まれたら「おお、ええんちゃう」と喜んだりする。
 私の叔父は医者から癌を宣告された時に「まぁ、ええんちゃうかな。長いこと生きたし」と言い放った。実に切ない「ええんちゃう」であった。

ちなみに返事をしない相手や、否定する人に対しては、「本当は良いと思ってるんでしょ?」という念押しの「ええんちゃう思てんちゃうん!」というややこしい言葉があるが、これはネイティブでないと使うのは難しいだろう。

ええんちゃうは、標準語で言うと「いいんじゃない」と同じ意味合いだが、「ちゃう → 違う」が付いてるだけにややこしく捉えられるようだ。「良いのに違うのか? 良くないということか?」みたいな理屈をこねる地方人も居る。それこそ大阪人にとっては「どっちでも、ええんちゃう」であるのだが。  

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