大阪ん♪ラプソディー【第94回】

大阪ん♪ラプソディー

ホームへ戻る > エッセイ&コラム > 大阪ん♪ラプソディー > 大阪ん♪ラプソディー【第94回】

「これでいいのか?」


 私には別れかけの旦那が居る。
 別居して10年以上経つのだが、仲たがいして別れるという話ではなかったので、なんとなく高齢の母が亡くなるまで離婚するのは止めておくかという事になった。実際、母も90歳前だったので「まぁ何年も先のことじゃないし」という感じだった。
 しかも結婚した時に婿養子に来てもらったのだが、その後で母がめちゃくちゃ旦那を気に入って、彼女の養子にもなった。ややこしいが要するにうちの母の本籍にも入ったという事だ。
 つまり私たちは夫婦でありながら姉弟にもなったわけである。これで離婚するとただの姉弟になる。(分かります?)
 ともかく別居した時に彼はうちから出て、母の住む実家の一階を改装して移り住んだ。とはいうもの、実はうちの隣だ。
 しかも向こうはテレビ環境が良くないという理由から毎日テレビを見にやって来る。ついでに夕食も食べる。酒も飲む。「どこか別居やねん?」とツッコミを入れられてもおかしくない状況だが、一応生活も生活費も別々だ。
 で、母が思った以上に長生だったので10年以上もこんな生活が続いていた。まぁ私にしてみれば東京の仕事なんかが入ると何週間も留守をすることもあるので、彼が毎日うちに来てくれていた方がセキュリティ的にも安全だし、猫の世話もしてくれるし、毎日母の顔を見に行ってくれるので「弟よ、いつもありがとう」という関係だった。
 しかし、去年その母も亡くなり、いよいよ姉弟として遺産分配協議書とかいうのを作って、正式に離婚という運びになることになった。
 のだが… そんな時期にこのコロナ騒ぎだ。どこにも出られない。弁護士のところに行くのも控えめで、急ぐ離婚でもないからいいかと放置中だ。
 おまけに私の方は夏まできれいに仕事がなくなったので暇で仕方ないから、毎日彼の夕食を作る日々が続いている。洗濯もついでだからしている。周りから見たら完全に部屋を別々にしてるだけのよくある夫婦生活だ。実家の彼の部屋を掃除しに行くことだけは拒否しているが、どうなることやら。
 「明日、すき焼きにして」
 「ええよ。」
 「あ、ビール注文しといてな」
 「分かってる」
 「お金預けるから銀行に入れといて」
 「へーい」
 会話も毎日こんな感じだ。これでいいのだろうか? 仲悪いわけじゃないからいいのかな? そんなことで私には別れかけの旦那兼弟がひとり居のだ。名前は大助と言う。  

▲トップへ

社長ブログ 広報ブログ エッセイ&コラム お客さまインタビュー 特別インタビュー ばね百科事典