大阪ん♪ラプソディー【第96回】

大阪ん♪ラプソディー

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「新しい世界」


 買い物に行ったスーパーのベンチにお婆ちゃんが2人座って、買ったお菓子を食べていた。
「暑いねぇ」「ほんまやねぇ」というのんびりした会話が聞こえてきたのはいいが、一人が「コロナも終わってよかったなぁ」と言い出して、足が止まった。
「へぇ、終わったんかいな?」
「そうやん、もう外に出てよろしいで言うてはったやん。」
「そら良かったなぁ。」
会話は続いていた。私は「違いますよー! 終わってませんよ。なんなら終わってないのに、経済が死ぬから恐々外に出てお金使えって言われてるんですよー」と教えてあげたかったが、だからと言って彼女たちがミナミに繰り出して豪遊するとも思えないので、側を通り過ぎた。
 世の中にはああいう人が沢山いるに違ない。特にお年寄りとか、子供たちは二か月我慢したからもう危機は去ったと思ってるのだろう。実際には薬もないのに外に出てるわけなのだが。
 演劇界もすこしずつ動き始めている。無観客で配信だけ始めた劇場もあるし、過去の作品をネットで流している劇団もある。
 私は6月1日にどこよりも早く、能楽堂に古典芸能の人たちを集めて会を開いたのだが、その時の大阪府のお達しは次の通りだ。「劇場は客席数の半分以上は入れない事、席と席の間は1m離すこと。演者と観客は2m。出演者の接触はなるべくしないことが望ましいが、是非の限りではない。」
 実際に能楽堂のスタッフと椅子を計って並べてみると、200席のうち置けたのは52席。しかし半分入れてもいいというのなら100席まで作っていいのか? いやあかんやろ。などと協議したがその辺はグレイゾーンに包まれたまま終わった。
 解禁直後だったので、観客に配布物は渡さないということも決められていた。つまりチケットレスにしろというわけだ。次の公演のチラシなども配れないし、なによりコロナ対策の注意書きさえ配れない! 仕方ないからあっちこっちに対策が書かれた用紙を貼ることになった。(読んでいる人はいませんでしたがね)
 お越しになる方は、受付で名前だけ言ってもらって確認。無料だったのでお金の受け渡しも無し。ただし、未然に電話番号とアドレスを聞いていくシステムだった。
 受付で、おでこに光を当てるタイプの体温計で検温し、念のためにアルコールで手を消毒してもらって客席に入るという物々しさではあったが、世界中の開場した劇場でやっていることと同じではある。
 結果として50人ばかりのお客様に10人近くのスタッフが必要になった。これが500人、1000人の劇場や、スポーツのスタジアムになったらどういうことになるんだろうか? と想像しただけでクラクラしたが、そろそろそれも現実になる。
 そしてついにディズニーランドも開場するというではないか。いったいどんなシステムでやるのだろうか?今まで興味がないので行ったことがなかったが、スタッフワークを見に行きたいくらいだ。
 新しい衛生観念で世界が変化しつつある。来年は? 3年後はどうなっているのだろう? 興味は尽きないが、悩みも尽きない。  

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