ホームへ戻る > エッセイ&コラム > 大阪ん♪ラプソディー > 大阪ん♪ラプソディー【第97回】
某放送局で英語の番組の脚本を書いている。
日常生活の中で突然相手が外国人になってしまい、英語で答えなければ元に戻らないという設定のショートコントみたいなものだ。もちろん英語の部分は専門家が入ってチェックするので、私はストーリーを作っている。
が、このコロナである。緊急事態宣言の時期は、撮影が三密に当たるので出来ないという事態が起きた。
たとえ短くとも、ドラマである。撮影するためには監督、助監督、進行、チェッカーマン、タイムキーパー、照明、美術、小道具、衣装、ヘアメイクと一般の人が想像できないほどスタッフが要る。
時間内に納めなくてはならないし、角度を変えて撮ったりするので、舞台とは比べ物にならない人数だ。
しかしこれが集まれないという。出演者も当然密になっていけないので、会社の設定なんかはもってのほかだ。しかし撮影のストックが6月末までしかないというので、苦肉の策で自粛期にリモート会議しているとか、会社には交代でしか行けないので寂しくて、つい独り芝居をしてしまう専務とか、写真スタジオでメチャクチャ離れている2人とか、あらゆる手を使って何とか作ってきた。
それも漠然と夏ぐらいからは撮影が出来るだろうという予想に乗っ取ってのことだった。しかし現実は甘くない。このところの感染者数の上昇で第二波がきたと言われている。
そのくせ旅に出ろなんて言いだす政府に、みんな呆れながらも、もう自粛生活に戻れない状況を迎えている。(どうでもいいですが、曲がりなりにも英語の番組の脚本を書いているので「旅をしよう」は「GO TO Travel」じゃないですからね「let`s go on a trip」なので、小学生に覚えさせないで下さい!)
昨日、ディレクターから「今の状況でどんなドラマにするのか議論しました。コロナを前提としたポスト・コロナの世界観で行くのか、コロナ以前の普通の日常に戻すのか。感染者数の激増により先が見えません。かといって、出演者がマスクやフェイス・シールドをして画面に出てくるのか? というとそれもつらいモノがあり、中途半端な折衷案で「ある程度密にならない、距離に配慮した演出にする」というのが現時点での結論あります。ご意見などありましたらご連絡ください」
そんな歯切れの悪い決定に意見なんか言えんわ! だいたい人と人が触れ合わない設定のドラマなんか、すでにドラマじゃないし。と思ってはいるが、今は局もそんな事しか言えないのだろう。探り探りで仕事するしかないという、恐ろしい状況だ。
聞けばニューヨークでは州に住んでいる人は誰でも何回でもPCR検査を受けられるという。結果もすぐ分かるそうだ。それで陰性の人が堂々と仕事に行く。遊びに行って経済を回し、病気にかかってしまった人を即座に治療するというではないか。
「なるべく出かけないで下さい」と政治家たちが言い出して半年、日本は何をしていたのやら。政府が配ったひとり10万円は「自粛して家に居てくださいよ。」のためのお金ではなく「10万あげるから(税金ですが)、保証はないけど外に出てみてねー」の10万だったようだ。
相変わらず自助努力でふわっとした新体系を作り、頑張っている皆さん! 本当にお疲れ様です。そんなことで、私もあんまり人が触れ合わない設定の脚本書くのに精出しますっ!