オリンピックロード…リオへ向けて【第2回】

オリンピックロード…リオへ向けて

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「新たな取り組み」


 この数年、新年の抱負といったものを私は用意したことはない。
既に新年とは言えないのであるが、まあ旧暦の新年ということにしよう。
北京オリンピックの時もロンドンオリンピックの時も、私は候補として活動していた。活動していたということは、普通の人の一年の動きではなく、オリンピックに向けた自身の動きであり、それは普通の人の理解を超えると私は思っている。
新年の抱負を決めなさいと言われても、そんなことを考えることなどできない日程が組まれており、突然ドーピングチェックが入る。
新年らしさはそれなりにあるとはしても、心は「もう♪いくつ寝ると♪」の世界ではない。そんな生活を10年以上も続けてきたのだから仕方がない。
そもそも、私を含め多くのスポーツ選手は一つの試合に向けて生活リズムを調整しており、あまり月日刻みで物事を考えないものである。


 先日、髪を切りに行ったとき、美容師にこんな質問を受けた。
「一日を終えて帰宅して、ごはんを食べて、お風呂に入る、そして歯を磨いて寝るまでの時間なにをしていますか?」私がここの美容室に行くのは二回目で、お互いがあまり知らない仲なので、この質問がきたことには驚いたが、ふと考えてみた。
今までこの時間をあまり意識して過ごしていなかったので、今までの行動を振り返って考えてみた。私はそんなにテレビを見るタイプではない、読みたい本があるときは本を読んでいる時もあるが最近はあまりない。
思い返すとスマートフォン・携帯電話をさわっている時間が長いことに気がついた。特に何をしている訳でもないがなんとなく携帯電話を見ている。ネットサーフィンをして、自分や他人の情報を共有できるアプリケーションだったり、気になったことについて調べてみたりと何でもない時間を過ごしていることに気がついた。
ネットサーフィンをしているといろんな情報が得られて面白いと感じることもあるが、しかし、そこから得た情報がマイナスになることはないが、大きくプラスになるとは考えにくい。
私は一日の中で一時間ほど携帯電話を見ていると思う。つまり一日の24分の1を何でもない時間に費やしていることになる。
新年の抱負の話に戻って考える。これから新たなことを始めようとしても、大体の人の24時間のスケジュールは詰まっていると思う。何か新たな取り組みを始めるためには、まず何かをやめる必要があると思う。そうすることにより、空いた時間ができる、そこで何か新しい取り組みができて今ある自分に変化を加えることができるのだと思う。
2015年は目的なく携帯電話を見ることをやめる!!1ヶ月遅くなったが、10年以上ぶりに今年の抱負をもつことにした。
24時間が今までより長く、充実したものになればよいと思う。
 ヨット競技は、洋上でレースをするのは当然として、競技自体は陸上でレースのない時にこそ進展しているのではないかと、ありもせぬ疑問を持ってしまう。
ということは、私がこれまで行ってきた以上のこと、つまりは「なにもせぬこと」の大切さに気づいたことが、重要なのではないだろうか。


 2月中旬からは、クロアチアの遠征をスタートとして、スペインやカナダ等各地を転戦することになる。いつもは聞けていなかった陸上での海の声、風の声を今年は聞いてみようと心に誓いながら、出国準備をしている日々である。

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