オリンピックロード…リオへ向けて【第3回】

オリンピックロード…リオへ向けて

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「コミュニケーション」


 海外遠征のシーズンとなった。
現在はクロアチアのスプリットという街で練習に取り組んでいる。
練習海上はイタリアとクロアチアの間に位置するアドリア海。そう、ジブリ映画「紅の豚」の舞台となったと言われている海だ。
写真ではいかにもヨーロッパ感のある建物が並ぶ街に透き通った青い海が印象的なスプリットだが、実際はそうでもない。
確かに水はきれいだが、海に浮かんでいるゴミがとても多い。海面を何日も漂っているようには見えないのでおそらく海に直接投棄したのだと思う。
水がきれいなだけにとても残念だ。

アドリア海は温暖な気候で通年安定した良い風が吹くので、我々セーラー(船乗り)にとっては最高の海である。
私のようにアドリア海の風を求めて世界各国からセーラーがたくさん集まってくる。今回初対面のロシアの選手が来ており今後一緒に練習するので挨拶をかわした。私は「NICE TO MEET YOU ! I am SHIN!」と言って自己紹介をした。(シンノスケという名前だが外国人には発音しづらく、覚えてもらえないのでいつもシンと紹介している)この時ロシアの選手は私の挨拶に対して返事をして、名前を伝えてくれた。初対面であれば自己紹介は国籍問わず当たり前のことである。しかし、この時ロシアの選手は全く笑顔を見せなかった。過去にロシア人はあまり笑わないと聞いたことがある。実際にロシア人とコミュニケーションをとる機会が今までなかったので驚いた。
一瞬、過去に歴史上で起こったことに対して怒っているかのようにも見えた。

練習を終えてシャワールームでの出来事。ここのヨットクラブにはシャワーが3つあるが、お湯の出るシャワーは1つのみ。ここで行列ができるのは日常である。
たまたま私の前にロシアの選手がシャワーを使用していたので話しかけてみた。すると時折笑顔を見せ快く会話をしてくれた。怒っていたのではないことにほっとした。練習を終えて、少し緊張感が和らいだのであろう。
その後、数日間いろんな国の選手と練習している間に気がついたことがある。そう、ロシア人は愛想では笑わないということだ。他国の選手と比べて笑顔が少ないのが印象的である。私も含め日本人は愛想笑いをすることが多いと思う。思い返せば人と接する時、会話の中など多くの場面で表情を造っている場面が多々ある。考えてみれば相手の目、表情をよく見れば、その人が愛想で表情を造っているかどうかなど簡単にわかる。相手に好印象を与えよう、また悪く思われないようにしようという考え方で、愛想で表情を造ることは日常でよくあるのではないか。
これは、相手に不快な思いをさせたくない、心配をかけたくない、という気持ちが働いているのだと思う。ここは、日本人の良いところなのではないか。
逆に、ロシア人の場合は、自分の心を素直に表情で表現していることが彼らの良いところだと感じた。うわべだけの表情で会話が成立すること自体も、コミュニケーションとしてあまり良いとは言えない。

 海外で言葉の壁がある環境で生活している中で無意識のうちに相手の表情を見るようになって初めて気がついた。
日本では言葉の壁がないため、なにげなく会話が成立していても、話の神髄を理解するにはもっと相手の表情に着目する必要があると感じた。
日本人は相手の目をしっかりと見て話すことが苦手な人種だ。日本では心とは裏腹の造った表情が通用することもつじつまが合う。
ロシア人には、自分の心や気分とは別に、相手のことやその場の状況をみて会話をすることが必要だと思う。

 コミュニケーション一つでも、国によりさまざまな違いがあり、互いに良いところは取り入れるべきではないだろうか。

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