ホームへ戻る > エッセイ&コラム > オリンピックロード…リオへ向けて > 【第5回】
先日、和歌山県でRed Bullフォイリングジェネレーションが開催された。
この大会は16歳〜20歳の選手が対象のため、私は選手ではなく大会運営として参加させてもらった。エナジードリンクの会社であるRed Bullが主催する国内初のセーリングイベントとなった。
表彰式では、ゲストとして海洋冒険家の白石康次郎さんを招き、40分程度の講演が行われた。
白石さんは1994年にヨットで単独無寄港世界1周に成功し、当時26歳だった白石さんは同時に最年少記録を樹立した。
世界1周に挑戦した理由は「地球が丸いことを実際に体験し、確認したかった」とのこと。
水産高校を卒業後、造船所に就職した後、自分で設計したヨットに、水と食料をつむ。帆をあげて風力だけで176日かけて世界1周に成功した。
通常、私がヨットで海上に浮いている時間は長くても7時間程度である。なにか異常が起これば陸に帰ることもできるし、あたたかい食べ物も食べられる。夜は自宅のベッドでゆっくり眠れる。しかし、海上ではこれが日常ではない。
176日間も海上にいるということは大変なことだ。もちろん世界1周もレースである。自宅のようにゆっくりできる時間はない。1時間の睡眠もほとんどとれない。海上では常に艇は揺れている。外洋なので波も高く、嵐のような日も多い。怪我をした場合、持参している手術道具を使用して治療をする。まさに自分との戦いだ。
もし自分が挑戦していたらどうだろう。176日間も海上にいたら孤独だろう。心が折れるのではないか?そんなことを考えながら講演を聴いていた。
講演内容の一部
白石さん「孤独は感じない。港に帰れば妻や子供、応援してくれているみんなが待ってくれているから。いつもたくさんの人々に囲まれていても、心から信頼できる人が周りにいなければ孤独を感じる。つまり孤独かどうかは人数で決めるものではなく、心で決まる。」
私は個人競技のため、普段1人で活動していることが多い。周りの人から「孤独だけど頑張って」と言われることがある。そう言われると孤独を感じるときもあった。今まで孤独という感情について深く考えたことはないが、講演を聴いてあることに気がついた。
孤独を感じるということは周りにいる人の気持ちが見えなくなり、心の余裕がなくなっているサインなのかもしれない。
応援している人がいることを何時何時も決して忘れなかったことが、白石さんの世界1周という過酷な挑戦を支えていたのだ。
このエッセイをお読みいただいている皆様の気持ちをパワーにかえて、2016リオデジャネイロ五輪の頂点を目指します!